夏休みはやっぱり海5

バッツは話し終えると蝋燭の火を吹き消した。闇の中で白く消え行く煙が恐怖心を煽る。ティーダは思わず身震いした。
「バッツ…」
スコールが顔を上げた。確かバッツとスコールは昔馴染みだ。更に何か知っているのだろうか。これ以上背中が寒くなる話はいらない。
「ん?」
「お前妹なんていないだろ」
「そうだよ」
作り話だと明るく笑うバッツにほっとする。そうそう身近に怪奇現象なんて起こるはずもない。大抵は創作だと自分に言い聞かせる。
「でも、バッツの部屋にその人形あったよな」
クラウドの何気無い一言に話のクライマックスを思い出す。雨に濡れて髪を振り乱した日本人形の視線がティーダを捕らえた。ぶるりと大袈裟に震えて体に溜まった恐怖を逃がす。
「次は僕かな」
相変わらずの笑顔でセシルが名乗りを上げた。いつも穏やかな口調が語る内容によってはこんなにも恐ろしく感じることになるとは誰も想像できなかった。
「僕が学部生だった頃に通っていた大学は山の上にあってね、一本道なんだ。その山は昔は姥捨て山だったんだって。だからかな、道から少し外れると祠が沢山あるんだ…」

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