夏休みはやっぱり海2

本当によく晴れた。先日は泣きながら萎れていたティーダが元気に海に潜るのを見ると来て良かったと思う。自分はこんな炎天下の中を無防備に走り回ることはできないが、喜ぶ皆の顔を見られるだけで嬉しい。
気温も高くさっき水をかけた砂も大分乾いてきた。もう少し水が必要かとバケツを持って立ち上がる。
「…?」
ぐらりと歪む視界。何だろうと思う間もなく膝が崩れる。目の前が真っ暗になり、これが立ち眩みだと気付いたのはずっと後たった。
「大丈夫?」
「あ…ああ」
誰かに腰を支えられ、倒れるのだけは回避できた。ゆっくりと頭の中に光が戻るのを待ってから見ると知らない子供だった。大人びた顔をしているが、中学生くらいか。
「ありがとう」
「ずっと下向いてたのに急に立つと危ないよ」
「そうだな」
見知らぬ子供に説教されるのは何とも変な気分だが、助けられて正論を並べられては頷くしかない。
「何してるの?」
「サンドクラフト」
「ふーん…」
子供がちらりと作りかけの山を見る。
「何だか崩れかかってるけど、お化け屋敷でも作ってるの?」
「崩れてるか?」
「うん」
クラウドもさっきまで作っていた山を見た。確かに少しバランスは悪いかもしれない。
「手伝ってあげようか」
「泳いで遊んだりしなくていいのか」
「そんな子供っぽいこと、僕はしないよ」
砂遊びも十分子供っぽいと思う。遊びにきたのでなければここに一体何をしに来たのか。
「…時間があるならお願いしようかな」
だがクラウド自身も泳ぐ訳でもなく日陰にうずくまってるしかできない身だ。人にはそれぞれ事情があるのだろうと深くは聞かなかった。
「水汲みに行くの?僕が行ってきてあげるよ」
「ありがとう。オレはクラウド」
「ルーネスだよ」
目深に被っていたフードを取り慣れない笑顔で自己紹介する。ルーネスと名乗る少年も年相応の笑顔で手を振りながらバケツを持って海に向かった。どうやら印象は悪くないようだ。クラウドはパラソルの下に座り息をついた。相手は子供だ。いつものように素っ気ない返事をすると余計な誤解を与えてしまう。だから努めて明るく口を開いたが少し疲れた。知らず緊張もしていたようで、喉が渇いた。早くスコールが戻ってこないかと考えていたら目の前に誰かの影ができた。
「スコー…」
「一人なの?あっちでジュースでも飲まない?」
影は一つだけではなかった。顔を上げると知らない男達が立っていた。
「あ、いや。連れがいるから」
事を荒立てたくなくて控えめに言葉を返す。だが男達は口笛を吹いたり歓声を上げたりしながらにじり寄ってきた。なるべくなら穏便に済ませたい。それもスコールやルーネスが戻ってくる前に。だがそれが難しいことをクラウドは経験上知っていた。

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