合宿中2

スコールとティーダの授業風景は何かのコントを見ているようでクラウドは笑いを堪えるのに必死だった。二人とも真面目にやっているのだから笑ってはいけない。だが二人の微妙にずれた会話が面白い。
「お前本当にやる気あるのか?」
「あるからここにいるんスよ」
何度解説しても理解できないティーダにスコールがしびれを切らす。笑いながら二人のやりとりを見ていたクラウドが口を開いた。
「もっと簡単な言葉で噛み砕いてみよう」
そして身を乗り出した。とても大学生相手とは思えないような単語、表現、そして身振りにティーダの表情が明るくなる。
「分かった?」
「うん」
よかったと笑うクラウドとティーダが保父と幼児に見えてスコールは目を擦った。じゃあ次は?とクラウドの口調はどこまでも優しい。以前ティーダが自分は誉められて伸びるタイプだと自己分析していたのはあながち間違いではなかったようだ。
「じゃあ今やったところまで小テストしてみようか」
これを追試の代わりにすると提案するとティーダが喜ぶ。本来であれば記憶は睡眠をとることで定着するのだが、この様子では期待できない。必修科目ではないからと精一杯の温情だ。少し待ってとクラウドが問題を作る。それを見てスコールもやっと肩の荷が降りた気がした。



「…で、どうだった?」
夕食のデザートのリンゴを剥きながらバッツが尋ねる。ティーダは小テストが終わるといよいよ緊張の糸が切れたのか倒れるように眠ってしまった。ここに来てからろくに寝ていなかったのだから当分は起きないだろう。
「まあ…何とか及第点かな」
ウサギの形をしたリンゴを一つ取りクラウドが苦笑する。
「甘いなー」
「助手だもん、こんなもんさ」
「ティーダにしては頑張ったな」
スコールも頷きながらコーヒーを飲む。バッツはソファーに仰向けになって眠っているティーダを見た。畑違いの分野なのによく頑張ったと思う。スコールみたいに何でも完璧にこなす嫌みな奴もいるが、それは例外だ。
「約束通り、次は海だな」
「ああ」
楽しみだと嬉しそうにしているクラウドとは対照にスコールはあまり乗り気ではなさそうだ。
「スコールは海は嫌なのか?」
「海は嫌いではないが」
スコールが水が嫌いだとか泳げないという話を聞いたことはない。とすると…。
「ふーん?」
最近は機嫌が良くなるのも悪くなるのもクラウド絡みだ。
「クラウドは泳げるのか?」
「川では泳いだことはあるが、海だとどうだろうな」
クラウドが泳げないのを心配している訳ではなさそうだ。残る心配は何でも夏のせいにして開放的になっちゃう下心満載のおにーさん達のいわゆるナンパか。
大分マシになったとはいえクラウドの対人スキルは小学生並だ。いや、最近の小学生は随分と大人びているからそれ以下かもしれない。
「それは心配だなー」
「何?」
「いや、何でもない。洗い物してくるわ」
ある程度は見張ってやれるかもしれないが、体を張って守るのは恋人の役目だ。せいぜい頑張れと心の中で激励してバッツは厨房に逃げた。
バッツを見送りクラウドがウキウキとスコールに向き合う。嬉しそうに微笑まれるとスコールは何も言えなくなった。
「海だからじゃない、どこに行ってもスコールと一緒に居られるのが嬉しい」
「…ああ」
そこでやっとクラウドと遠出するのが初めてだったのだと気付く。だからクラウドはこんなに浮かれていたのか。自分も楽しまなければクラウドはきっと気を使うだろう。スコールもようやく楽しいバカンスなのだと思えるようになってきた。クラウドの肩を抱きそっと口付ける。
「楽しみだな」
二人の後ろのソファーに寝ていたティーダがごろりと寝返りを打つ。その目が開いているのに誰も気付かなかった。

[ 65/75 ]

[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -