風の行方1

スコールはクラウドを探していた。今日の講義はもうないし、クラウドも講義も授業もないはずだ。
準備室を覗いてもクラウドはいなかった。学食にもカフェテラスにもいなかった。あとクラウドがこの時間にいそうなのは…そう考えてスコールは走った。
あの日。
宣戦布告をされてからすきあらばクラウドのそばにいる、あの男。
いつも余裕で…気に食わない。すべてにおいて自分より優れている気がする。

何より大人だ。
そんなあいつに憧れているクラウド。
それがまた気に食わない。苛々する。





スコールはある部屋の前に着くとノックもせずに開けた。

『ノックもせずに入ってくるとは…躾がなっていないな、スコール・レオンハート』
『クラウドはどこにいる?』
『…口の聞き方もなってないな』

相変わらずの余裕ぶり。
デスクに座り資料を見ていた男…セフィロスはスコールを見て笑った。

『向こうのソファで眠っている。起きるまでこれでも飲んでいろ』

顎で示された場所へ向かおうとしたスコールにセフィロスはコーヒーを差し出した。
スコールは訝しげにそれを受け取り、セフィロスを一度見やってからコーヒーに口づけた。コクリコクリ。一口二口、三口分のコーヒーがスコールの喉を通っていった。全て飲み干し、クラウドの元へ行こうとしたとき、セフィロスが言った。

『あれに好き勝手しないでもらおうか』
『……何?』
『あれはお前のものではない。私のものだ。勘違いするな』

セフィロスの目が細められ、スコールが射ぬかれた。

『…っ』
『クラウドもお前が物珍しいだけ。くだらん恋愛ごっこだ』
『恋愛ごっこ…』
『お前がクラウドに何をしてやれると?』
『なっ…』
『知識も経験もなにもかもクラウドより少ないお前が、クラウドを幸せに出来るとでも思っているのか?』

スコールの心の奥の深い底に眠らせていた箱のフタが開きかけた。

『…クラウドは俺を選んでくれた』

好きだと言ってくれた。
スコールとてまったく不安がないわけではない。
しかしクラウドの言葉があったからスコールは自信を持てていた。

『言っただろう。お前が物珍しいだけだ。…大事にしすぎてしまっておいたら猫が悪戯したようなものだ』
『猫だ、と?』
『猫より質が悪い。教えてやろう、クラウドを院に行かせたのはお前でもクラウドでもない、私だ』

セフィロスの言葉にスコールは目を見開く。

『言っている意味がわからない…』
『お前が合格したからでも、クラウドが自分で院に行くと決意したからでもない。クラウドには院に進む道しか残っていなかったのだからな』
『……まさか!』
『頭の回転の速さは凡人よりはマシだな。あれの就職をなかったことにしたのは私だ』
『な…!』
『クラウドといれる時間が延びただろう?』

口許に笑みを浮かべなおもセフィロスは続ける。

『私はクラウドを手放すつもりは毛頭ない』

瞳は少しも笑っていなかった。
セフィロスはソファに近づく。
スコールはあまりの衝撃に動けなかった。
ソファではあどけない表情で眠るクラウドがいた。

『私のものに勝手にこんなものをつけるな』

セフィロスがクラウドの首筋を指でなぞる。そこは昨夜の情事の跡が朱く刻まれていた。

『、ん…』

小さくクラウドが身じろいだ。とき、セフィロスがそこに口を這わせた。

『!!』

いきなりのことにスコールはただただ立ち尽くす。

『っ…ぁ、すこ…』

未だ眠るクラウドの口から出るのはスコールの名前。
それが面白くなかったセフィロスは昨夜スコールが付けたキスマークの上から新しいキスマークをつけた。
金縛りがとけたようにスコールは走りよりセフィロスを殴った。
セフィロスは数歩たじろいたが、クククと笑っていた。

『クラウドに触るな!』
『私の台詞だ。お前が来る前、私とクラウドが何をしていたかわかるか?』
『俺には関係ない!』
『これを見てもそう言えるのか?』

セフィロスはそう言うとクラウドのシャツのボタンを開け、胸元を露わにした。

『っっ!』

クラウドの胸には昨夜スコールがつけたキスマーク以外のキスマークが多数つけられていた。

『ん…』

クラウドは未だ目を覚まさない。

『気持ち良さそうにしていたぞ…?』

セフィロスはクラウドのシャツを全て脱がした。
肌が露出したのにも関わらずクラウドは起きない。
スコールはソファの前方、テーブルの上にコーヒーがあることに気づいた。

『あんたクラウドに何か飲ませただろ!?』
『あぁ。それがなんだ』

セフィロスはクラウドのボトムに手をかけた。

『やめろ!』

スコールがセフィロスを再度殴ろうとしたとき、違和感を感じた。

『っぁ…?』
『やっと効いてきたか』
『な、に…?』
『貴様が先程飲み干したコーヒーをクラウドにも飲ませた』

セフィロスが笑う。

『貴様の目が覚めた時に、クラウドは…………』

そこでスコールの意識は途絶えた。







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