すれ違い1

『あんたいつもあんなことされてるのか?』

スコールは歩みを止め、顔は前を向いたままでクラウドの手を握っていた手に力を込めた。

『?あんなこと?』

どのことだ?と首を傾げるクラウド。
その姿は常ならば可愛いが、今はそれどころではない。

『押し倒されてただろ!』

頼むから自覚してくれ!
心の中でスコールは叫ぶ。

『あぁ…大したことじゃない。今に始まったことでもないし』

さらりと言い退けるクラウドにスコールは目眩すら覚えた。

『……らだ?』
『え?』
『いつからなんだ?!』
『いつ…って…入学してしばらくしたら、かな』

恋人があんなに堂々とセクハラにあっていることをまったく知らなかったスコールは、ショックが隠せなかった。
入学してしばらくしてから…ということはもう4年は確実に被害にあっている。
スコールと付き合う前も、そして付き合い出してからも、さらには恋人になってからも、セクハラされていたというのか。
守ってやれなかった自分に腹が立つ。
何も言ってこなかった恋人に、自分はそんなに頼りないのか信用できないのかと言いたくなった。

『なんで何も言わなかった?』

口調が冷たさを帯びていたかもしれない。

『言っただろ?大したことじゃない』
『大したことじゃないだと?!』
『スコール、落ちつ』
『落ちつけるわけないだろ!あんたは平気なのか?俺以外の男に触られてクラウドは平気だって言うのか!』

握りしめた手に勢いあまって力を入れすぎてクラウドが痛いと小さく呟いた。

『スコール、あれは単なるセクハラだ。相手にしなければいいだけだ』
『…』
『それにもう慣れたし』
『……俺が年下だからか?』
『は…?』
『俺が年下で頼りないから何も言ってくれなかったんだろ?』
『違う、そうじゃない!スコール…』

クラウドが言葉を続けようとした矢先、スコールが無理矢理口づけた。
荒々しいキス。
息が苦しくなって、酸素が欲しくなって、無意識に口を開いたらすぐに生暖かいものが侵入してきた。

『んんっ…』

驚いてクラウドは口内をまさぐる舌を思わず噛んでしまった。

『っ…!』

スコールが口づけを止めた瞬間、クラウドはスコールの頬をビンタした。咄嗟の出来事だった。叩いたクラウドも自分がしたことに驚き自分の手とスコールを何度も見た。

『ぁ…すこ、』
『もう、いい』

スコールはそう言うと繋いでいた手を離して、クラウドに背を向けた。

『ス、コール?』
『……頭、冷やしてくる。気をつけて帰ってくれ』


スコールはクラウドを振り返ることなく、歩いて行った。

『…スコール、』

残されたクラウドは目に涙をためてその場に立ち尽くした。








ーーーーー


それを窓から見ていたセフィロスは、クククと愉快そうに笑っていた。

『もうじき私のものになる』

セフィロスの目線の先にはクラウドしか写っていなかった。



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