すれ違い2

スコールはどうしたらいいのか正直わからなかった。
こんなに激しい怒りを覚えたのも、こんなに悲しい気持ちを抱えるのも、どちらも初めてだった。
どこにこの感情をぶちあてたらいいのか、それはクラウドにセクハラしていたあいつしかいないのに。
あいつが元凶なのに。
でもそれを思えば思うほど、どこかでクラウドを守れなかったのは自分、気づかなかったのも自分、頼りにされてなかったのも誰でもない自分であることも嫌でも思い知らされた。

(…クソっ!)

行き場のないありったけの感情を手に乗せて石垣をぶん殴る。
何度も、何度も。
それでも痛いのは手ではなくて、心だった。

(傷ついた顔してたな…)

しかしあそこで穏便に済ませれるわけがない。
泣かせないと誓ったのに、結局泣かせてしまうのか…スコールが何度目かわからない拳を石垣に叩きつけようとしたとき、背後から腕を掴まれた。

『…何やってんだよ』
『………』
『無視すんな。ここどこだと思ってるんだ?まだ大学は休みだけど人はいるんだぜ?』
『……放せ』
『無理っつーか嫌』
『…っ放せ!』

振りほどこうとしたが、腕に込められている力がとても強く振りほどけなかった。
普段そんなそぶりは全く見せないのに、力はスコールよりも上かもしれない。
スコールは腕を掴む人物を睨んだ。

『…お前に何がわかる』
『まぁ…だいたい何があったかはわかっちゃうんだよなぁこれが』

口調はいつもの風のような飄々ぶりだったがスコールを見つめる瞳には鋭い光が宿っていた。

『知ってたのか…?』
『何を?』

それでも敢えて口にしない人物にスコールは痺れを切らした。
いつもの冷静沈着なスコールはそこにはいなかった。

『知ってたならなぜ言わなかった!!バッツ!!』

スコールはバッツの胸倉を掴み、叫んだ。

『言ったら何かお前にできたのか?ガキなお前に』

その言葉が引き金となってスコールはバッツを殴った。

『っ…!』

倒れこそしなかったがバッツは2、3歩後退り、手の甲で殴られた頬を擦った。

『だからお前はガキだっていうんだよ!』
『なんだと!?』
『なんでクラウドがお前に話さなかったか考えてみろよ!』
『な、に…?』
『言っとくけどなぁ…っ、クラウドは俺にだって言ってこなかったんだ!忘れんな、あいつだって男なんだ!なんでクラウドが…なんでお前はわからねぇんだよっ!!』

バッツの拳がスコールの顔に当たった。
そのままスコールは石垣に背中をうち、ずるずると座り込んだ。

『いってぇ……』
『……』
『とにかく、クラウドの気持ちがわからないお前に、クラウドは守れないぜ』

バッツの言葉がスコールに突き刺さる。

『ただ……、』
『……』
『俺も悪かった…。…俺だって何とかしてやりたいって…』

バッツの声に悔しさが混じっていたのをスコールはどこか遠い所で聞いていた。

『でも忘れんなよ!クラウドはお前を選んだんだ!あいつは、お前を一度も…』

そこまで言ってバッツは言葉を発するのを止めた。

『…一発は一発だから、おあいこだぜ』
『……バッツ、』
『…ん?』
『…どう、したらいいんだ?』

ようやく発したスコールに少しばかりバッツは安堵した。
そして、

『とりあえず…顔冷やせよ。で、クラウドと話してこいよ』

まずはそれからだろう?
バッツはそういうと少し笑って、学内へと消えていった。

スコールはまだ座り込んだままだった。
どうしたらいいか。
それはもうわかっているのに、心がまだざわざわとざわめきたっていた。




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