初対面で初対決

クラウドに待っていろと言われて、スコールは大学内のカフェテラスにいた。
スコールの入学式ももう秒読みだが、ぎりぎりで院に進むと決めたクラウドもまた急いで準備をする必要があった。
クラウドは成績優秀だ。学費も全額免除されている。
大学側からすればそれぐらい有望な学生が院に進むことは大歓迎らしく、手続きをとれば院の学費も免除してくれるらしい。
クラウドに入学してからでもいいけど人が少ないうちに大学見とかないか?案内するし、と言われると断る理由もなければ大歓迎なスコールは、クラウドと一緒に通うことになる大学に思いを馳せた。

『少し休憩しよう』

ここのケーキ美味いんだとクラウドがスコールを案内したカフェテラス。
中に入って、一息ついたところでクラウドの携帯が着信をつげた。
電話の主はクラウドが憧れてやまない、クラウドがこの大学に進学した理由でもあった教授。
スコールは会ったことはないが、クラウドからたまに話を聞いたことがあった。クラウドは少し電話で話してから、ちょっと行ってくると残して席をたった。

そして30分経ってもクラウドは戻ってこなかった。
スコールは携帯を確認するが電話もメールもきていない。
カフェテラスでの会計を済まして、スコールは先程クラウドに案内してもらった構内の案内図を脳内に広げた。

『あそこの棟が教授たちの準備室や研究室だ。院に進むとあそこでも研究をやらせてもらえるかもしれない』

クラウドが指さしたのは東にあった棟。
スコールの足はそこへ向かっていた。






ーーーーー…

(ここか…)

スコールは建物の前で、棟全体に視線をやる。
なんの躊躇もなく中に入って、入ってすぐにある教授の名前と研究室の部屋番号をかかれた掲示板に目をやる。

(…確か、セフィロス…教授だったよな)

目当ての名前を探し出し、スコールは研究室へと向かう。
すれ違いになるといけないからと左手には携帯を握りしめていたが、未だにクラウドからの連絡はなかった。

(…セフィロス教授の研究室はここだな)

ノックしようとしたその時だった。

ガタッ

室内で物音がした。
正確には何かが落ちる音。
スコールはノックしようとした手を引っ込め、ドアに耳を近づけた。

『ゃ……きょ、じゅも…』

『二人の時は名前を呼べと教えただろう』

『っ…ぁ、はな、せ』

『もう放すつもりはない。お前は私のものだ、クラウド』

漏れ聞こえてきた二人の男の声。
クラウドと教授とおぼしき男の声。
そして教授とおぼしき男がクラウドと名前を呼んでいた。スコールはその瞬間ドアを蹴破った。

『クラウド!!』

スコールの眼に映ったのは、床に押し倒されているクラウドと、押し倒している教授らしき男。

『っスコール…!』
『ほう…』

スコールは勢いのままセフィロスを突き飛ばし、クラウドを抱き抱えた。

『スコ、』
『大丈夫か?アンタ何してるんだ!?』

スコールはセフィロスを睨みつける。
睨みつけられたセフィロスはとても楽しそうに、可笑しそうに、クククと笑った。

『まだ何も?しいて言うなら…学生に指導していた、というところだ』
『アンタがセフィロスか』
『お前に呼び捨てにされる覚えはない…スコール・レオンハート』
『なっ…』

何故名前を知っているのか。
余裕の表情を浮かべ、けれど冷たい目で見られスコールは背筋に冷たさを感じた。

『…クラウドに触るな』

絞り出した声は震えていたかもしれない。
クラウドを抱きしめる腕に力をこめ、なおもスコールはセフィロスを睨みつけた。

『何か勘違いをしているようだな』

セフィロスは言う。

『クラウドはお前のものではない。私のものだ』

その一瞬は、楽しそうに可笑しそうにしていた瞳はすぅと細められ威圧感を増した。

『な、んだと…?』
『覚えておくんだな、スコール・レオンハート。不変なものなどこの世にありはしない』

目を逸らしたいのに、逸らせばもう立ち向かうことはかなわないことをスコールは頭のどこかで感じていた。

その時だった。

『教授、いい加減にしてくれ』

クラウドの呆れ返った声が二人の間に響いた。

『クラウド…?』
『スコールすまない。この教授いつもこうなんだ』

(いつもこう?!)

『は?いつもって…?』
『いつもすぐセクハラするし、いつも誰かに敵意を向きだしにするんだ』

さっきまでのことがなんでもないかのようにクラウドは話す。

『クラウド』
『なんだ』
『書類は自分で提出しろ。もう帰れ』
『言われなくてもそうする。スコール行こう』

セフィロスから渡された書類をクラウドは確認すると、じゃあなと言って未だセフィロスを睨みつけていたスコールの腕を引きドアへと向かった。ドアを開け、クラウドから廊下に出た。
ドアが閉まる瞬間、スコールには隙間からセフィロスが見えた。

"ーーーーーー"

それを意図していたかのようにセフィロスが笑みを浮かべながら呟いた一言を、スコールは聞き逃さなかった。
廊下で進まなくなったスコールを不思議に思ったクラウドがスコールを見れば、硬直していた。

『スコール?』
『……』
『スコール?』
『……っあの野郎!望むところだ!』
『す、スコール?』
『帰るぞ!!』

ずんずんと歩みを始めたスコールに首を傾げながらクラウドは後をついていった。




"宣戦布告だ…"
スコールの頭の中でセフィロスの声が回っていた。





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