実際は想像を絶する
ティーダは時計を見た。
時刻は午後6時を回ったところだった。
ティーダの通う高校は全寮制で、その寮は高校から少し離れたところにあった。そしてティーダは今その寮の自分の部屋にいた。寮部屋は二人で一部屋が割り当てられており、ティーダの相部屋の相手はスコールという。
スコールは週末は寮に帰ってこない。最初は実家に帰ってるのかと思ったがどうやらそうではなく、恋人のところにいるらしい。
ティーダは恋人を見たことがなかった為、らしい、としか表現できなかった。
金曜日、学校が終わってすぐにスコールはそのままどこかへ行った。
そして日曜の夕方、あるいは月曜日の明け方に帰ってくる。
もちろんここは寮だから門限もあるし、外泊するなら許可が必要だ。でもそれをスコールはしていかないし、門限や点呼はティーダや他のクラスメートたちでごまかしている。
最近日曜日の夕方にスコールは帰ってくる。
そろそろかも、とティーダは部屋の窓の鍵をあけた。部屋があるのは1階だ。そう、スコールは窓から帰ってくるのだ。
しばらくして窓がカラカラカラと音を小さく立てながら動いた。
『おかえりっス』
ティーダが顔を出せば、スコールはいつもの仏頂面のまま、あぁと返事をした。
『上手くごまかしといたっスよ』
『…悪いな。助かる』
部屋に入ったスコールは、金曜日は制服だったのに私服で帰ってきた。
『制服は?』
『こっち』
手にしていた紙袋の中から制服を取り出しスコールはクロゼットにしまった。
『あの、さ』
『なんだ』
『今回も恋人のとこっスか?』
『あぁ』
高校生で恋人がいてもおかしくはないが、スコールのは普通のとは違う、そんな雰囲気をティーダは感じていた。
『…やってきちゃったって感じっスか?』
『何を』
『その…』
『?』
『……セックス』
ティーダは顔を朱くして、小さな声で言った。
『だったら?』
スコールの目が笑っていた。余裕そうな、それ。
『ど、どんな感じ?』
『どんなって?』
『だから、…胸とか触るんスか?』
胸。
ティーダに言われて一昨日と昨夜のことを思い出したスコールは、過去のそれにも関わらず熱の高ぶりを感じた。スコールの恋人の威力はハンパない。色気もなにもかも…
『触るには触るな』
『やっぱ柔らかいんスよね…』
柔らかい。
別に柔らかくはないが。
口にしそうだったが、スコールは留まり、
『お前が思っているよりも実際はすごいぞ』
とティーダに言った。
スコール自身の唇を己の舌で舐めながら。
ティーダはますます顔を朱くして股間を押さえた。
ティーダの頭の中ではすごいことを想像してしまったらしい。
『ちょ、スコール!すごいって…』
『…続きは点呼の後だ』
悶々とするティーダを余所に、早く金曜日になればいいのにとニヤつくスコールがそこにいた。
[ 16/75 ][*prev] [next#]