進む道

『内定が取り消されてた?』
『あぁ…』

帰宅して、ソファに座って雑誌を読んでいたスコールに就職活動の話をした。
スコールが徐に立ち上がって『その企業に行ってくる』なんて言われたから急いでいいからと座らせる。

『自分でも就職すべきかどうか悩んでたし…そんな人間に来てもらっても企業も迷惑だろうし』
『でもアンタこれからどうするんだ?卒業までもう…』
『そのことなんだけど、』

スコールは俺の言葉を待っていた。

『……院に、進もうと思う』
『院に?』
『迷ってたんだ。研究は好きだし、もっとやりたいことがでてくるかもしれない』
『……』

スコールは黙って話を聞いてくれていた。
見つめられる瞳から眼を逸らせない。

『……それに、』
『それに?』
『スコールの、近くにいれる、だろ?』

こんな考えじゃだめかもしれないけど、それでも決めた。
院に進むことに。
帰り道、いろいろ考えた。
今が春を待つ季節でよかった。暑かったら思考がまとまらなかっただろう。
冷たい空気が頭を冷やすのを助けてくれた。
帰ってスコールの顔を見て、最初に思った進路を素直に選ぼうと心に決めていた。
帰宅して、スコールの顔を見て、最初に浮かんだのは……

『スコールと、机…並べてみたいんだ』

4歳の歳の差。
普通なら叶わない望み。
普通でないことを、スコールと味わってみたかった。

『……スコール?』
『、本気か?』
『う、んっ!』

言い終わる前に抱き寄せられた。

『そうか…俺も嬉しい!』
ニパっと笑うスコール。
付き合い始めてからこんなすごい笑顔のスコール初めて見たかもしれない。
そうかそうか、とスコールがニコニコしている。
うん、俺もなんだか嬉しくなってきた。
だから、

『これからも、よろしく』


自分からのキスなんて久しぶりにした気がした。
不意打ちをくらったスコールがみるみる赤くなって、ちょっといい気分。
春がまた少し楽しみになった。






[ 30/75 ]

[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -