出逢い

すれ違う瞬間にふわりと香る香水を胸いっぱいに吸い込む。彼がそこの角を曲がるとスコールは立ち止まって残り香に想いを馳せた。時折すれ違うあの人は凛としていて一目で心を奪われた。いつか触れてみたいと思う。
「よお、スコールじゃねえか。塾帰りか?相変わらずがり勉してんな」
「…」
せっかく余韻に浸っていたのにバッツに邪魔をされてしまった。スコールはへらへらと笑うバッツを睨み付けた。だがバッツは気にする様子もない。この年上の友人は赤子の頃からの付き合いだ。近所に歳の近い子供がいなかったから、と小さい頃からバッツには散々振り回されてきた。小学生の頃のバッツ絡みの思い出はろくなものがない。
「あんたはいつにも増して能天気だな」
「分かる?最近友達になった奴がさ、すっげえ美人なんだけど結構面白い奴でさ」
美人と聞いて先ほどすれ違った彼を思い出す。あれくらいの美人は滅多にお目にかかれないだろう。
「すかした奴かと思ってたらただぼーっとしてるだけだったりさ、とにかく飽きなくて」
スコールはその友人とやらに同情した。友人がまともな神経の持ち主なら自分と同様バッツに振り回されているに違いない。
「クラウドってんだ。写真見るか?」
「いや、遠慮して…」
「そーかそんなに見たいか」
人の話を全く聞こうとしないバッツに苛つく。大体赤の他人を見て何が嬉しいのだろう。ほら、と携帯の画面を見せるバッツに形だけでも付き合う。どうせ次の瞬間には忘れる顔だ。適当に合わせておけばいい。
「あ…」
適当に合わせるつもりだったが、スコールは食い入るように画面を見た。さっきすれ違ったあの人がはにかんでいる。頬を染めてくすぐったそうに肩を竦めて。上目遣いでこちらを見ている写真を見てスコールは自分に微笑んでいるような錯覚に陥った。
「クラウド…」
バッツが連呼した名を確かめるように呼ぶ。
「おう、クラウドだ。美人だろ」
今日は何て運が良い日なんだ。こんなところに縁が転がっているとは。
「バッツ…」
「お?」
「紹介してくれ」
「…へ?何で?」
逃げられないように肩を掴んで迫る。最初は知り合いからでも何でもいい。あの人の目を真っ直ぐに見たい。
「ああ…いいけど」
クラウドの都合を聞いて後で連絡すると約束を取り付けてからバッツを解放する。どんな声をしているんだろう。何が好きなんだろう。クラウドのことを考えただけで高揚する。会ったらどんな話をしようか。近い未来を想像しながらスコールは家路についた。

[ 7/75 ]

[*prev] [next#]




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -