出会い

初めて見たときに何て綺麗なんだろうと思った。同時に他人を寄せ付けない冷たいオーラを感じ、意地でも仲良くなってやるとも。
「隣いい?」
「ああ」
他にも空いている席はたくさんあったが、バッツは敢えて彼の隣に座った。それから暫くは、無言。知り合いでないから当然だ。どうやってきっかけを作ろうか。
「なあ、テキスト見せてくれよ」
忘れてきた、と机の上を指差すと彼は黙って頷いた。
講義が始まると彼は驚くほど勤勉にノートを取り始めた。バッツはノートを覗き込んだ。顔に似つかわしい細かく綺麗な字で分かりやすく書いている。見た目通りの真面目君なんだな。それからまじまじと顔を見た。女も羨むってこういう奴のことを言うんだろうなと思った。白金の髪と同じ色の睫毛は何の手入れをしなくても長い。澄んだ青い目も軽く結ばれた桜色の唇も、性別を超えるどころか同じ人間とは思えなかった。さて、どうするかな。そして再びノートに目を移す。よし、次はこれだ!と作戦が決まる。
授業が終わると彼は静かに机の上を片付けて教室を出ていこうとした。
「あ、待って」
「ん?」
「ノート貸してくんない?」
きょと、と彼が目を丸くした。それはそうだろう。今日初めて、たまたま隣になっただけの名前も知らない奴にそんなことを言われるとは思わないだろう。むっつりと黙り込んでしまった彼を見てバッツはまずったか、と冷や汗をかいた。ノートの貸し借りを嫌がる人種もいるということをすっかり失念していた。あんなに綺麗に作り上げたノートだ。赤の他人に貸してやる義理はない。
「…ああ」
だが彼は鞄からノートを取り出すとバッツに渡した。
「休んだことはないから抜けてるところはないと思うが」
「!サンキュ、ええと…」
「クラウドだ」
「俺はバッツ。じゃあ来週この授業で」
「ああ」
手を上げて別れると何だか気が抜けた。思ったより良い奴だ。なまじ顔が整っていて考えている事が顔に出にくいから冷たい印象を受けるんだろうな。来週はノートの礼に食事にでも誘ってみようか。
「何だか楽しくなってきたぞ」
きっとクラウドとは良い友達になれる気がする。バッツは意気揚々と教室を出た。

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