学食にて

きょろきょろと辺りを見回してバッツを探す。昼休みの学食は混んでいて、たった一人を探すのは難しいように思えた。
「おーい、クラウド。こっちこっち」
声のする方を見るとバッツが手を振っている。人を掻き分けて何とかたどり着くと、隣の椅子に置いていた鞄を寄せてくれた。
「サンキュ」
「おうよ」
テーブルにトレイを置いて座るとやっと一息つけた。
「何にしたんだ」
バッツがトレイを覗き込む。
「唐揚げ定食」
「唐揚げ一個ちょうだい」
「ああ」
「じゃあ俺のカレーも一口やるよ」
あーんと口を開けるバッツにクラウドは呆れた。
「何やってんだ」
「何って箸ないもん。食わしてくれよ」
指で摘まんだりしないなんていつまでも子供じゃないんだなと感心しながら唐揚げをバッツの口に運ぶ。美味いと喜ぶ顔を見てクラウドも自然に笑顔になる。
「じゃあ俺も。はい、あーん」
口元に運ばれたスプーンをぱくりと食む。コクがありスパイスの効いたカレーは美味かった。
「…美味いな」
明日はカレーにしようと考えていると目の前にカレーの乗ったスプーンが現れた。
「もう一口やるよ」
言われるままに口を開ける。
「あ、そうだ。ちょっと目を瞑ってみてよ」
「?…うん」
バッツが突拍子もないことはいつものことだ。何か悪戯をされるのではと思いながらも目を瞑るとカシャ、とシャッター音が聞こえた。
「バ…」
名前を呼ぶ前に口の中にスプーンが入る。そのままカレーを味わう。次の瞬間には何事もなかったかのように他愛もない話を振られた。

[ 18/75 ]

[*prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -