センター試験

はぁ…
スコールは本日何度目かのため息をついた。
『スコールなら大丈夫だ』
何回今朝の言葉が頭の中を巡っていることだろうか。ついにやってきた、高校3年間の集大成その1のセンター試験。
失敗するとは自分も思っていないし、緊張しているかと聞かれればそれも違う気がする。
『レオンハートの学力なら満点だな』
と学校の先生に言われるよりも、今朝恋人に言われた言葉の方が何倍も何十倍も嬉しかったし、信用できる。
ただ、センター試験の話をするとクラウドはバツが悪そうにしていた。さすがに当日の今日はそれはなかったが、昨日や、先週、何かと忙しそうにしていり、メールや電話をしても、『ちょっと立て込んでる』としか言われなかった。
センター試験や受験ごときでブルーになるスコールではない。
(クラウド…何かあったのか…?)
考えても、思い当たる節は無く、いつの間にか受験する大学の教室へとついてしまっていた。
受験票を見て受験番号を確認し、自らが座るべき場所へ移動する。
周りにいるのはみな同じ境遇の人間ばかり。
スコールは鞄を置き、受験票と筆記具を机に出し、腕を伸ばして顔を伏せた。ちょうど居眠りでもするかのように。周りは参考書を読んだりしているにも関わらず、スコールは尚も恋人を思った。
(終わったら、電話しよう)
(また忙しいと言われたら)
(直接会いに行こう)
その時、スコールの肩を誰かが叩いた。
『おはっス!寝るとかすごいっスね』
同じ学校同じクラスのティーダだ。
『…別に寝てたわけじゃない』
『ふーん。ま、お互い頑張るっス!』
それだけ言うとティーダは後ろの席に座った。
そうこうしてるうちに、試験監督らしい数名が入ってきて、準備をしだした。
いよいよ、始まる。
時刻や試験時間などが黒板にかかれ、説明がなされていった。
まだスコールの頭を占めるのは試験より可愛い恋人。
そしてついに、試験問題が配られ始めた。
試験監督が1人ずつに、1部ずつ丁寧に机の上に渡していっている。
もうすぐスコールに差し掛かる、というときに、スコールの鼻孔を霞めたのは、忘れもしない恋人の匂い。彼独特のあの香水の香り。
スコールは顔をあげた。
その先にいたのは、スーツを着て、銀縁の細身のメガネをかけている、クラウドだった。
『クラ…』
咄嗟に出そうになった声は、名前の主が素早く人差し指を唇にあて、静かにという制止によって空をさ迷った。
クラウドだ。
クラウドだ。
この場にいることが信じられない。
クラウドは、試験問題をスコールに渡して、そしてまたもや素早い動きで、あらかじめ手に隠していたお守りをスコールの筆記具の横に置いた。
『!』
『…うん』
クラウドはスコールの反応をみて、うんとだけ一言言った。そして、スコールの大好きな、綺麗なブルーの瞳が、『頑張れ』と語っていた。
何ものにも負ける気がしない、とはこういうことか。
一番近くに来てくれている。その事実がスコールを奮い立たせた。
果たして試験は始まった。

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