万年筆収集家ばかりで実用する者がいなければ万年筆市場が縮小するため、万年筆会社は初心者向けも製造しています。
パーカーペン社ではリフレックスとフロンティアがそれにあたります。
フロンティアは嵌合(かんごう)式キャップを採用し吸入器またはインクカートリッジを用いる両用式万年筆。
・インク瓶からインクを吸い上げる吸入器か、
・使い捨てカートリッジを選べるのが両用式。
右からS型吸入器(コンバータ)、インクカートリッジ、首軸+カートリッジ、胴軸。
吸入器はD型も合います。
ペン先は硬く、書き心地はさらさらしており、字幅はF(細字)のみ、といっても漢字筆記には太い字幅です。
日本ではFが最も売れると言われますが、細字嗜好が高まる日本人にこの太いFは合わないでしょう。
ペン芯の性能は良、染料系インクを使う限りではインク漏れを起こしません。
首軸はべたつかない硬いゴムに覆われ、ペン芯がねじ留めされています。
樹脂は熱収縮するため、洗浄時熱湯に漬けないよう注意しましょう。
パーカー伝統の矢羽を象ったクリップが据えつけられた嵌合式ステンレスキャップには、BS7272安全基準に適合する通気孔があります。
幼児が誤飲した際の気道確保のためですが、キャップの縁のエッジが立っているのはいただけないものです。
PS樹脂製胴軸は質感が安っぽく、近年になってステンレス軸が登場、少し改善されました。
胴軸と首軸のねじ結合部に微小な寸法差があり、使用中僅かにズレる不快な感触があります。ただし、ねじが緩むことはありません。
カートリッジは独自規格で他社と共用できませんが、最も普及している欧州型インクカートリッジの口径2.5mmに対し、口径3.15mm(1/8インチ)と太く、インク流量が多いという利点を持っています。
また、パーカーは高度経済成長期の日本で会社員の三種の神器に数えられたブランドのため、消耗品の入手は容易です。
手持ちのフロンティアはペン先を削って細くしてしまいました。
同社のロングセラー、パーカー45とともに。
左端は、ソネットというちょっと高級な万年筆、フロンティアはこれを原型にした廉価版です。
高級品でもなくポップでもファニーでもないフロンティアは、ネクタイを締めなくても携帯できる万年筆であり、胴軸のブレと字幅の少なさが改善されれば、より広い層に受け入れられるでしょう。