14Q 3
試合会場となっている体育館が建つ公園の一画を、海常の制服に身を包んだ笠松と黄瀬が並んで歩いていた。
黄瀬は、何時もの様に左手をポケットに突っこんでいた。
因みに右手と言えば、黒い携帯を持っていた。そこから黄瀬の耳には白いイヤホンのコードが延びている。
黄色の眼差しはじっと携帯の画面に落とされていて、笠松は眉を寄せた。
「何見てんだよ」
「おは朝の録画ッス。朝占い。コレの結果いいと、緑間っちも調子いいんス」
なんだ、また元同朋の話か。どれだけコイツは奴等の事が好きなんだと笠松は内心呆れつつ、「ああ、帝光の」と呟いた。
「で、何座?」
「カニ座ッス。因みに黒子っちは水瓶座。うのっちは――あっれ、何座だっけ……」
「――そこまで聞いてねぇよ」
全くコイツは。実を言えば、こんなにゆっくり歩いていたら試合開始に間に合わないと笠松はわかっていた。
だが、少しくらい彼に合わせてやってもいいか、そう思って笠松は、黙って黄瀬の隣を彼のペースに合わせ、ゆっくりと進む。
だが、いよいよ占いの終盤。おは朝は黄瀬にとって驚きの結果を報じた。
「一位はカニ座! おめでとう! 今日は文句なし! 残念。最下位はみずがめ座です。今日は大人しくしておいた方がいいです……」
画面には、憂鬱なイメージのイラストが映る。
「げぇえ〜……」
階段に差し掛かったところで、笠松の数歩先を進んでいた黄瀬は、苦々しげな声と共に足を止めた。
「ん? なんだよ?」
同じように立ち止まり、不思議そうに黄瀬を見つめる笠松を元気のない貌で振り返って言う。
「最悪ッス――」
(fortune‐telling)
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