13Q 4
 ところ戻って、誠凛高校。

 タオルを取りに戻った火神、続いて白美が部活終わりのバスケ部部室に足を踏み入れた。
 部屋は薄暗く、シーンとしている。

 火神は白美の傍らを離れると、自分のロッカーに近づき、扉を右手で開いて左手を中に突っ込んだ。
 ごそごそと物をまさぐり、タオルを掴んでバタンと扉を閉じる。

 そして、隣――窓際で、自分と同様ロッカーに向かって突っ立っている黒子を見つけ、一時停止。


「うわっ!! 何してんだ!! つか、何時から!!」

 火神は、余程びっくりしたのだろう。片手で拳をつくって、黒子に向かって叫んだ。
 その様子を見て、白美はクスクス笑いを思わずこぼす。

(――予想以上に、思い通りだね)

 黒子は、悪戯っ子の様に笑っている白美と、ぎゃあぎゃあうるさい火神を無表情で見比べてから、口を開いた。

「忘れものです。後から入ってきたのは、火神くんですよ」

「言えよ! 怖えから!! つか、白美も笑ってんじゃねえ!」

「フッ、フフフ、ごめんごめん、フッ。ホラー映画さながらさながら……、っと」

 楽しそうな白美と相変わらずの黒子に、火神はドッと疲れたような顔をして溜息をついた。

(気ぃ抜くとやっぱ全然気づかねぇ……。久しぶりだこれ)

 と、その時、彼等に部室内を移動していた白美が声をかけた。

「ねぇ、それよりコレ」

「ん?」

「監督の忘れ物、だよね?」

 白美は、青い丸椅子の傍らで、座面に置かれているDVDケースを指さして言った。
 そこには、「正邦VS北和田 第五予選」と書かれている。

「動画の撮影とか情報入手とか、視察は、基本的に監督が引き受けてくれてるからなー……」

 白美は呟くと、身を屈めてDVDケースを手に取った。


――見てみよう、というのだ。


(DVD)

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