24Q 3
「さー、帰ろっかー!!」
「いや、ちょっと、」
明るく元気に扉を開けたリコに対して、日向がぴくぴくと震える手を伸ばして、制止の声をあげる。
「いや、ちょっと、ごめ、まじ、待って。二試合やってんだぞ、しかも、王者」
ぷるぷると震えながらやつれた顔をして、掠れた声で日向が言う。
他の伊月、小金井、水戸部も同様で、彼らはさながらゾンビのようだった。
「あ、ごめん……」
「俺らは少し休めば大丈夫だけど、火神がなあ……、無茶したし」
日向が椅子に腰かけて視線を向けた先、火神は地面に腰を下ろしてぴくぴくしていた。
「ご覧の通り生まれたての虎です」
脇から白美がからかいの声をいれる。
火神は白美を睨む余裕もなく、「動くどころか立てねえっす……」と声まで震わせる。
「でもー、いつまでもここにいるわけにはいかないしー……」
リコは困った顔をする。白美は携帯を手に、笑顔で口を開いた。
「取りあえず、どこか一番近い店に入りましょう。腹も空き頃ですし」
「そうね、橙野くん。それがいいわ」
そうして一年トリオ三人は先に控室の外に出る。
「火神くんは誰かおんぶしてって」
「じゃあじゃんけん」
白美を覗くメンバーでじゃんけんをして、白美達は一番近くにあったお好み焼きの店に入った。
★
引き戸を開けると、空腹を刺激する香りがどっと白美たちに襲いかかった。
「すみませーん」
リコが先頭で入り、呼び声を上げる。
威勢のいい店員の声が、リコ達を迎えた。
「いらっしゃーい!! ……あらお客さん多いね」
「十二人なんですけど……」
「ちょっと席足りないかなあ」
リコと店員の会話を聞きながら、白美は隣のびしょびしょな火神を笑う。
「覚えとけよ黒子……雨ん中おとしやがって」
「すみません重かったんで」
「まあまあ、ああ火神、その服だと店に迷惑だからほら、シャツと短パンに着替えて」
差し出したそれを火神が受け取ったところで、白美はぐるりと店内を見渡し、そして奥のテーブルでこてを咥えている姿に既視感を覚えた。すぐに目もあって「あっ」と声を上げた横で、火神も気づいたらしい、「黄瀬と笠松!!」と大声を上げた。
「呼び捨てかおい!!」
「うぃーっす。あ、黒子っちうのっちもやっほー」
「……おう」
黄瀬は明るく挨拶をしてきた。でも白美は申し訳程度に返すだけで、黄瀬から顔を背けてしまう。
「ありゃりゃ、うのっちってこういうところで素が出るんスよねえ」
そんな白美を、黄瀬はクスッと笑った。
(Why are you blushing?)
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