『お前がそんなやつだと思わなかった!』


ゆっくりと目を開けたカナフは、は、と息を吐いた。
痛い位の朝日がカナフの目元を狙い澄ましたかのように差し込んでいて、眩しさに目を細めながら気だるげに体を起こす。
夢見は最悪だった。
血の気が引いたように手足の冷たくなった手で頭を覆いながら、意外にも頭はすっかり冴えていて二度寝できそうな気配がなく、仕方なくカナフは起き上がって身支度を整える。

昨日見せたエレンの泣き顔が頭をちらつく。
エレンはリヴァイがカナフにキスをしたのだと言い、そして馬鹿みたいだと泣いていた。
大切に思う人達に幸せになってほしい。
その願いは叶いかけていたのに、過去からの亡霊が邪魔をする。
俺か、とカナフは苦笑した。

自分という存在がエレンを傷つけている。
自分という存在がリヴァイを追い詰めている。
このままじゃ幸せに何てなれるはずがなかった。
問い質すべきだろうか。
カナフは迷っていた。


「エレン!? どうしたのその顔!」
「目腫れてる。……あのチビが……?」
「違ぇって!……なんでもねぇよ」

演習にギリギリでやって来たエレンの顔を見てカナフは瞠目して、眉根を寄せた。
ずっと泣いていました。そんな顔をしていた。昨日話していた時もすでに泣いていたのに、あれからずっと泣き続けでもしていないとあそこまで酷い状態にはならないだろう。ずっと見ていたカナフと、ふと顔を上げたエレンの視線が合い、エレンはパッと顔を背けた。昔なら「にこお」と笑って犬みたいにカナフに近づいていたのに、その変化は殊の外周囲に違和感を与えた。ケンカでもしたのか。そう思わせるに十分な態度だった。

こんなんじゃ。

こんなんじゃ、誰も幸せになれない。





「リヴァイ兵長」
「……、カナフ」

演習が終わり、誰もいなくなった広場でカナフはリヴァイを呼び止めた。その目には剣呑な光が覗いていて、しかしカナフはその眼光に気圧されるでなく、同じくらいの眼光でリヴァイを貫いていた。好意的でない話をしようとしている。一瞬でそれとわかる程の緊張感が二人の間に存在していた。

「あなたに、お聞きしたいことが」
「……なんだ。時間が惜しい、手短に話せ」
「寝ている俺にキスしたそうですが、どういうおつもりですか」
「……!」

間を開けずに続けられたカナフの言葉に、絶句したのはリヴァイの方だった。
瞠目して息をのむリヴァイに、やはり誰にも気づかれていないと思っていたのか、とカナフは視線を逸らして小さくため息をつき、先ほどよりも若干柔らかくなった視線でリヴァイを瞳に移す。

「……エレンから聞きました。その現場を、偶然見ていたそうです」
「そうか」
「……あんたはエレンと付き合ってる。そうでしょう」
「ああ、そうだ」
「傍にいる恋人を大事にもしないで、思い出の中のカナフさんとキスですか?」
「ッ」


酷いことを言っている。
カナフは自覚していて、それはリヴァイを攻撃するだけだと知りながら、それでも言わずにはいられなかった。
カナフも、そこまで想われていると知って全く何も感じないわけじゃなかった。未だにリヴァイに思いを寄せている身としてはその事実はカナフの胸をこの上ないほど熱くさせる。しかし、それ以上にエレンの泣き顔が頭を過ぎり、そして自分に縛られているリヴァイが辛かった。


「……俺は、別に構いませんよ。虫に食われたと思って忘れます。けど、エレンはそうじゃない。エレンは、そんな器用な事できない。……あんた、それ分かってるでしょう」
「……お、れは」
「大事なやつを失くして、忘れられなくて、似てるやつを目で追って。そりゃね、俺だってわかりますよ、経験がありますから。けどそれは、付き合ってるやつがしちゃいけないことですよ。恋人がいるのに、他人の空似に惑わされて、あまつさえ恋人を傷つけて、説明も無しなんて、そんなの、絶対しちゃいけないことですよ」
「……」


リヴァイは、怒るでもなく逆に少し寂しそうにも見える顔をした。
手を伸ばしたら触れる距離にいる、この世の全てとさえ思った相手を突き放して別の男の元へ向かわせる。そのためだけの言葉を言いながら、カナフは自身が泣きそうになっていることに気付いた。
気付いたから、無理やりにでも笑みを浮かべてリヴァイを見つめる。


「あんたに、お願いがあります」
「……なんだ」
「エレンを泣かすな」
「……」
「兵長が好きで、けど男同士だからって諦めようとしてたエレンのケツ叩いたのは、エレンには幸せになってほしいって思ったからです。ただでさえ巨人だ化け物だ言われ続けて、望んでそうなったわけでもないのに会った事もないやつから糾弾され続けてる。あんたと一緒なら、エレンは幸せになれるんじゃないかって思ったんですよ。……そして、兵長も」
「……?」
「兵長も、……エレンと一緒なら幸せになれると思ったんだ」

カナフは呟くように言葉を紡いだ。無理やり貼り付けたような笑顔は、リヴァイには泣き出す直前にしか見えなかった。上手くやれていると思っていたのはカナフだけで、嘘をつく事がさほど上手くないカナフにいつもリヴァイが折れて「そういう事にしておいてやる」と呑み込ませていた。カナフとカナフが重なって見える。
そのどうしようもない事実にリヴァイは眉根を寄せたまま顔を背け目を閉じた。

「勝手だな。お前の感情押し付けてんじゃねえ」
「……すみません」
「つくづく、腹が立つな、お前は。 ……なんで、そんなに似てんだよ」
「ッ」
「……エレンは、大切にする。俺だってその覚悟があったから成人もしてねぇガキに手ぇ出したんだ。……お前に、手ェ出したことは、その……悪かったな」
「いえ、お気になさらず」

リヴァイの覚悟の滲む、力の戻った表情に安堵してカナフは頬を緩め弧を描く口元を開いて言葉を発する。安堵はしたが抑え切れない寂寥のやり場がなかった。泣くのを堪えながら心の底から愛しい人を送り出すしかなかった。そう仕向けたのはカナフ自身で、しかし苦しんでも悲しんでもそうすべきだと、リヴァイの幸せの為ならそうすべきだと、そう自分に言い聞かせていた。
死ぬか生きるかなら、死ぬ確率の方が高い。
いつか死ぬなら言うべきじゃないと後ろ向きな覚悟をしたカナフを責められる者は誰一人としていなかったが、それを英断だと言ってくれる者もきっと、誰もいなかった。



***



いつものようにノックを四回して中から「入れ」と声がかかると、カナフは団長の執務室に入ると同時に、「ようエルヴィン」といつも通りの顔で入室した。
日常をこなすことで日常に戻ろうとしていた。
書類整理を手伝い、仕分けをしてファイルし、郵送分の書類を封筒に詰め、紅茶のお代わりを淹れる。
違和感に気付きはしたがエルヴィンは、危うさを感じてあえてカナフに尋ねる事はしなかった。自分に戻るという手順をエルヴィンに求めたという事に優越感を感じたのもその理由かもしれない。

やがてやることもなくなったカナフがソファでくつろぎ始めたころ、エルヴィンは前々から危惧していた事をカナフに尋ねた。この件に関してカナフ以上に理解のある人物はいないと思ったからでもあるが、理由はそれだけではなかった。

「情が移って殺せない?」
「……まあ、そういう事になるんじゃないかって危惧はしてる。その時は、カナフに頼むかもしれないな」
「頼まれるでもなく、そうなったら俺がやるが、いらねぇ心配だと思うぞ」
「なぜだ。失う辛さを知っているからこそ、」
「だからこそ、だ」
「……?」

もしもの話ではあったが、それは万が一ではなく、この先いつ起こってもおかしくはない仮定だった。
エレンが暴走したその時には、監視役となったリヴァイがその手でエレンを殺す事。エレンが調査兵団に引き渡された時の条件の一つだった。審議所での話をかいつまんで聞いていたカナフは、分かりきったことだという顔で笑って紅茶に口を付ける。

「あいつ、ああ見えて大分独占欲強いんだ。執着もするし、依存もするし。そんなあいつが、エレンの命を他人任せになんてしねぇよ。そんな大役を、他人に譲るはずがねえ」
「……なるほど。さすが元彼。よく御存じだ」
「やめろ、からかうなよ」
「……だからエレンとくっつけたのか」
「あ?」
「独占欲の強い、執着心むき出しの依存型、だから?」

意地の悪い笑みを浮かべながらエルヴィンはカナフに言った。質問したわけじゃない。エルヴィンはカナフを試していた。挑発していたと言ってもいい。本当にリヴァイを他人に渡してもいいのか。後悔はないのか。辛くは、悲しくはないのか。
直接確認する勇気がなかった。遠まわしに聞くしかできず、もどかしい思いもしていたが、直接聞いてストレートな返答が返ってくるよりマシだとエルヴィンは思っていた。
カナフは考えるように首を小さく傾けて口角を上げる。

「ああ……まあ、そうだな。うまい事収まりそうな気がするだろ。あいつは、……たった二人きりの世界を望んでたからな。たった二人しかいない世界で、たった二人で生きるってのが望みだった。リヴァイとエレンは、多分そういうとこ似てると思う」
「……どういう心境なんだ?未だに大好きなリヴァイと、他人をくっつけるというのは」
「……それ聞くの野暮じゃねぇか?」

嫌そうに顔を顰めて咎めるようにエルヴィンを見るカナフに、やはり諦めきれてはいないのだと認識させられたが、感情が表情に出る性質でもなく悪戯に笑ってカナフを見た。

「知りたいね、どうしても」
「うーわ出たよ、意地悪おじさんが」

リヴァイの事は忘れて自分と付き合えばいい。
仄暗い本音を隠しながらエルヴィンは、一歩を踏み出す勇気をどうしても持つことが出来ずに理解者の顔で笑った。
部屋の外でぱたぱたと駆ける足音に気付いたものは誰もいなかった。



***



エレンから「ちょっと付き合え」と声を掛けられ、突然の事に喜んだもののエレンの雰囲気に剣呑さを感じて口を引き結び、それ以上何も言われず何も言わないまま以前連れ出された林に再び訪れていた。
足を止めたエレンは即座に口を開く。

「なあ。お前元彼なんだって?」
「……、何の話だ」
「とぼけてんのか? 団長と話してたじゃねぇか、元彼さん」
「……聞いてたのか」

あれほど近くにいたカナフが遠くに感じてエレンは言いようのない悲しさを感じていた。
自分と一緒に笑っていたカナフは嘘だった。全部作られたものだった。本当の事なんてあったのか。
それ以上に、リヴァイの恋人にそっくりだった、ではなくリヴァイの恋人そのものだったという、その事実が。

「兵長とは何もないって、言ってたじゃねぇかよ!!」
「待てエレン、話を聞け」
「あんた、……本当は誰なんだよ」
「そ、れは」
「カナフ・ベルネットって人なんじゃねぇのかよ!」
「俺は、」
「あんたがカナフ・ベルネットなら、あんたが兵長を守ればいいだろ!俺、なんでこんな……バカみたいだろ!!」
「俺は!」
「、」


カナフの強い言葉にエレンは口を閉ざした。
エレンはただ悲しかっただけだった。そのやり場のない悲しみを自身で処理することも、リヴァイに確かめる事も出来ず、カナフに甘えてぶつけていた。エレンがそうしているという事も、そうするしかないんだという事もカナフは分かっていた。
自分がエレンとリヴァイを振り回しているというのも、分かっていた。


「俺は、エレンも、リヴァイも、大切に思ってる」

「……何言って、」

「お前の事、最初は手のかかる弟みたいだと思ってた。巨人になれるって知った時は、そりゃ驚いたけどな。けど、余計守らなきゃと思ったよ、これからきっと、ずっと苦しい思いをするはずだと思ったからな」

「カナフ……」


傷ついたような目でカナフを見るエレンに、カナフも悲しげに顔を歪めながらも気丈に笑みを浮かべて見せた。
大切な弟だと言ったエレンへの贖罪さえ覗かせるような深い、慈悲のある笑みだった。その顔を見たエレンは悲しみを覆っていた怒りが剥がれ落ちるのを感じていた。悲しい、苦しい、寂しい、そういうのしかなくなって。泣きそうだ。そう認識して込み上げてくるものを必死に堪えていた。


「けどそんなお前が、リヴァイを好きだと言った。……それもアリだなと思ったんだ。いつかいなくなる俺よりも、二人で支え合っていくなら、それはきっと、俺なんかが傍にいるよりもずっと幸せだと思ったから」
「……」
「安心しろ、今は、俺がリヴァイを守る。人類最強の男を守れるのは今んトコ俺しかいねぇ。俺はまた、リヴァイを守ってくたばる、そのために調査兵団に来た」
「……な、」
「……お前が俺の助けなんていらねぇくらい強くなれば、俺はお役御免だな。早くそうなってくれよ?」


悪戯に笑うカナフを凝視するエレンは自分の中の感情をどう処理すればいいのか分からなかった。
自分は再び死ぬためにここにいる。
要約してしまえばそれだった。
そんなカナフの言葉に納得なんてできるはずもなかった。
どうして笑っていられる。どうして自分以外の男に渡せる。どうして大好きな人と離れる事ができる。どうしてそんな。
寂しい決断ができるんだ。

「亡霊なんかが、リヴァイの前に現れない方がいい。リヴァイを支えるのは俺じゃねぇ」
「……」
「お前になら、リヴァイを任せてもいいと思ったんだ」
「……そ、れって」

カナフの悲しい告白に、理解するための頭は麻痺してしまった。
生き残ったのか生き返ったのか、カナフの言葉だけでは理解が追いつかなかったが、どちらにしても奇跡だった。エレンにはカナフの覚悟は理解できなかった。そんな奇跡が起こったのに。いつでも真っ直ぐぶつかるエレンには、カナフがどうしてそう決断したのかが。
探るように凝視するエレンに諦めたように笑うカナフがどうしようもなく悲しく見えて、エレンの目には涙が溜まる。


「……卑怯な真似して悪かった。リヴァイを頼んだぞ、あいつ大分不器用だからな。……ああそれと、この事リヴァイには言わないでくれ」

「カナフ……」


内緒な、と人差し指を立てて笑い去るカナフの背中にエレンは名前を呟いた。
カナフはエレンを騙していたわけではなかった。そして、感情のままに傷つける言葉ばかりを吐き捨てていたエレンを一言も責めなかった。たった一人。たった一人でカナフは立っていた。支える事も支えられる事もなく。酷いことを言ったエレンを見捨てる事もなく。
誰も恨まず、自分の責だと全てを受け入れていた。

最後まで直接は言わなかったが、カナフ・クライバーとカナフ・ベルネットは同一人物だとエレンには伝わっていた。そして大切な人を託された。それは一体どれほど辛いことなのか。
嗚咽するのを我慢している子供みたいに泣いて、拳で拭う。
悲しくて、辛くて涙が込み上げているはずなのに、暖かい真綿でくるまれていたような心地を味わいながら、エレンは自分がカナフにずっと守られていたのだと気付いたのだった。



***



団長室に訪れたカナフは、いつものようにノックを四回して返事を待った。
少し間を置いてから、中から「どうぞ」と聞こえ、居住まいを直してからドアに手を掛け静かに開く。

「……失礼、致します」

室内にはエルヴィンの他に、リヴァイがいた。
一瞬だけ視線を向けたもののカナフはすぐに懐に手を忍ばせて会釈をしながら通り過ぎ、エルヴィンの前まで歩を進めた。

「カナフか……ノック4回ってのあ、なんかの合図か?」
「い、いえ。ただの癖です。……エル、ヴィン団長、お持ちしました」
「ああ、ありがとう」

懐から取り出した三つ折りの書類をエルヴィンに差し出して、当然のようにエルヴィンは受け取った。
その流れが計算されつくされているような違和感で、リヴァイは目を細めて「おい、」とカナフに声を掛ける。

「そいつは何だ」
「単なる、報告書です。城の老朽化が目立つところをまとめたものですが」
「……常に持ち歩いているみたいだな」
「そんな、まさか」

力なく笑うカナフに眉根を寄せる。カナフはリヴァイがここまで疑惑を向けてなおリヴァイの顔を見る事はしなかった。
先ほどはあんなにも真っ直ぐリヴァイを見つめていたにも関わらず。
無意識に舌打ちをしてリヴァイは、腕組みをして座っているエルヴィンをを見下ろした。

「おいエルヴィン、お前、なんで『どうぞ』なんて言ったんだ」
「……何も変ではないだろう」
「いいや、目の上のコブ共のやってこないこんな場所で、お前が『どうぞ』なんて言うはずがねぇ」
「……そうかな、そんなこともないはずだが」
「あそこでエルヴィンが、『入れ』っつってたら、どうしてたんだ?なあカナフよ」
「……、」

疑惑が晴れたなんて思ってはいなかった。カナフがどれだけ「別人だ」と言い募ったところでリヴァイにとっては信じるに値しなかった。答えに窮するカナフに鼻で笑って笑みを浮かべる。

「いや、言わなくていい。知ってるからな。入れと言われたらお前は、俺の知るカナフみたいに図々しく部屋に入る」
「気のせいでは。私はそんな真似」

カナフの言い逃れにリヴァイは何を白々しいと醒めた目で見つめる。その目にカナフは二の句を継げなくなった。
カナフはできれば嘘はつきたくはないと思っていた。だからこういう時、騙すためだけの言葉を発する事が出来なかった。カナフは考えれば考えるほど何も言えなくなって、室内には嫌な沈黙が流れた。きっかけを待っている、そんなチリチリ焦げるような緊張感があった。
視線を彷徨わせるカナフをリヴァイはじっと睨む。その視線は、追及の手が止まない事を示していた。

「……お前、本当は」
「……」
「カナフ・ベルネット、なんじゃねぇのか……?」
「……」
「……本当の事を、言え」
「……」

カナフは否定も肯定もしなかった。ただ視線を伏せるだけのカナフに、疑惑が膨らんんで行くのを感じながら、ついにはリヴァイもカナフを直視することが出来なくなっていた。俯いて。腕組みを解いて。目をぎゅっと閉じる。


「これは、俺の……勘違いか……?」


掠れた震え声のリヴァイにハッと顔を上げるカナフは、俯いて震えているリヴァイを目に留めてぎゅうと心臓が引き攣れる痛みを感じていた。震えてるリヴァイに絆されそうになる。しかし、打ち明けたところで結局また苦しめるだけだとカナフは開きかけた口を引き結び、余計な言葉が零れ落ちないよう拳を握りしめて感情の奔流に堪えていた。

「……、おっしゃっている、……意味が、分かりません……」
「……そうか。……悪かったな」
「いえ……失礼、致します」

リヴァイは、何度躱されても何度否定されても諦めきれなかったカナフを見ずに謝罪した。
踵を返してから自身も震えていたことに気付いたが、カナフは振り返らずに部屋を後にした。
リヴァイを守るために来たはずなのになと心中で一人ごちる。

逃げてるみたいじゃないか。
その事実にカナフは、嗤うしかなかった。





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2015/10/19 gauge.


SK

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