dice4




「どういうことだ!」
「お前に関係があるか?」
「なんだと!」

俺とエースの奇妙な関係は驚くほどあっさりと終わりを迎える。




何日か経った。
俺はいつものように洗濯カゴを抱えて甲板に向かい、洗濯物を干す。
白ひげ海賊団は、海賊だというのに船の中は驚くほど穏やかだ。陽だまりのような空間で、一人だけ異質な俺はその空気に混ざることなく洗濯を繰り返す。

そんな穏やかな時間は、エースの怒号によって破られた。

「コノエ!!」
「エース…?」

普段の子犬からは想像も出来ない鬼気迫る様子のエースに、驚いて名前を呼ぶ。
しかし、俺に懐くように優しく接していたことの方がそもそも異質だったのだからこれが普通なのか。
ぼんやりと納得して、エースが目前に迫るまで動きを止めて黙って見ていた。

「どういうことだ、コノエ!」
「どうした」

目の前まできたエースは、俺の両肩を掴んで揺さぶった。

「死ぬってどういうことだ!!」

唐突すぎて何のことかと思ったが、すぐに合点がいった。
この船に現れた時の事を、誰かから聞いたのかもしれない。俺の事をよく思っていない人は沢山いる。嫌がらせも何もないまま過ごせているのは、俺がこの船にいるのは白ひげの決定なのとほぼ傍にいるエースのおかげだった。
まずはエースを俺から引き剥がしたいのかもしれない。船員を家族として考えるこの船の船員なら、家族兄弟の身を案じるのは当然だった。
血が繋がっているわけでもないというのに、その絆が少し羨ましい。

「ああ、俺がここに来た時の話か?」
「そうだ!」
「死のうと思ってビルから飛び降りたら、ここにいたんだ。不思議な話だよな」
「笑うな!」
「なんでだ。結局生きてるんだから、なんだっていいだろ?」

そう笑って見せる。
なぜ怒っているのかが、まず分からないが、生きてたって笑ったらそんなに不愉快なものだろうか。

「ふざけんな!」
「お前に関係があるか?」
「なんだと!」
「ああ、そうか。生きてたって笑ったら怒るんだから死ねばいいんだよな。分かってる。俺も色々考えるんだが中々隙が、ッ」

なんなんだ。
殴られた。
生きてて笑ったら笑うなと言われ怒られて。
死ぬと言えば殴られる。
理不尽だな、俺はまた笑った。

「ッ!だから、笑うなっつってんだろ!!」
「そんなに俺に腹が立つなら近づかなければいいだろ。不愉快だ」
「ッ!、……ああ、そうするよ!!」

俺を軽く突き飛ばしてエースは去って行った。
周囲から俺を睨む目があちこちから突き刺さる。

俺は、少し呆然としてしまった。
不愉快になるから近づかない。
当たり前で、最善策だと思うのだが。
しばらく頭から消えそうになかった。
伝えた直後のエースの、あの傷ついたような顔が。




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