異種と人間の娘 8
その後、DIOを倒した承太郎達と合流したなまえと花京院はジョセフと共に病院へ向かった。特に花京院は一度死んでいる身なので、身体に異常が無いか検査をしたのだ。 そして後遺症は無いと診断された。傷痕ひとつ残さなかったなまえのスタンドはそんな部分までフォローしていたらしい。
病院を抜け出して一行を追ったなまえはジョセフにこっぴどく叱られる……ということはなかった。 なまえを前にジョセフは相当苦い顔をしていたが、結果として仲間の命が助かったのだ。おまけにDIOに血を吸われたジョセフを蘇生させたのもなまえだ。負傷したポルナレフと承太郎の治療もしていて、つまりはなまえに頭が上がらないというだけの話だ。 しかしなまえとしては少し寂しいものがある。旅の中でスタンド使いの攻撃から守られていたのだからお互い様なのに、となまえはぼやいた。
「なまえのスタンドはいったいどういう能力なんだい?」
日本へ帰る飛行機の中で、なまえの隣に座った花京院が問い掛けた。 彼がいつも着ていた学ランは穴が開き血に汚れて使い物にならなくなっていた。なので今着ているのはワイシャツとスラックス。学ランを着ていない花京院の姿はなかなか見れないので、なまえにとってはなんだか新鮮だ。
「単純に言えば傷の治癒なんだけど、治癒をするためには私の回復力を原料にしてたんだと思う。……前は、私の傷はスタンドを使わなくても数秒で治ったけど、今は回復力をスタンドで沢山消費したから人並みなんじゃないかな。 でもどっちもだんだん衰えていったのは、スタンドで治した傷が溜まりすぎたから。“傷を治す”ってことよりも“傷を吸い取る”の方が近いのかな? 吸い取った傷は負のエネルギーだからね。そのエネルギーがスタンドに蓄積していって、それを一気に噴出させたからDIOに傷をつけれたんだ。 エネルギーを解放したから、また典明の傷も治せたの」 「じゃあ……更にスタンドを使ったら、君の傷は自然治癒が出来なくなってしまうのか」 「これ以上私の回復力が下がることはないって確信できるわ。スタンドの成長のために消費してきたから、完成した今は必要が無いの。 今の私のスタンドに出来ることは、傷を治すことと、吸いとった傷の放出だけ。 ……ねえ、典明」
花京院の手に、なまえは手を重ねて握る。感じるのは人間の体温だ。そのあたたかさはまぎれもなく花京院が生きている証だ。
「私は何も後悔してないわ。私は何も失ってない。親に遺されたものを私が勝手に捨てて、典明を治しただけ。何の心配もないの……だけど、私、あなた一人を失うことがとても怖い」
あの病室で別れて以来、こうしてゆっくりと話が出来る時間が無かった。その間にもし花京院の心変わりがあったとしたら。なまえが生粋の人間でないと知って、花京院が躊躇していたら。
「ねぇ、あのとき私に言ったこと、後悔してない?」
重ねた手が震える。なまえは花京院の顔を見ることができず俯いた。
「なまえ、僕には君を突き放す理由なんて一つもない。君はずっと僕らのために傷を治し続けてくれた」 「私が皆を無くしたくなかったから……自分のためだよ」 「僕を助けてくれた君は僕にとって恩人だ。けど恩人だから君を粗末にできない訳じゃない。君が僕を助けるより前から君のことが好きだし、君がどんな人間だとしてもそれは変わらない」
思わず顔を上げてしまい、目をまっすぐに見つめられてなまえは瞬く間に真っ赤になった。
「なまえ、あの時、君が僕にキスをしたのが告白の返事だと思ってもいいかい」
赤い顔のままなまえはこくりと頷く。
「じゃあ、なまえ」
もう一度しっかりとなまえと目を合わせて、丁寧に言葉を紡いだ。
「君が僕より若いままで生き長らえようとも、僕の人生が君にとって一瞬の出来事でしかなくとも。僕は君に救われた命を死ぬまで、君を幸せにするために捧げるよ」
プロポーズはまだ早いかな、と一度言葉を切る。 まずは、
「僕の恋人になってください」 「はい……」
こんな殺し文句を言われて断れるわけがない。 のぼせたような心地でなまえは頷いた。
(やれやれ……無粋な真似はしねーぜ) (娘はみーんな日本人に嫁に貰われていくのはなんでじゃー!!)
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