short 2014シーザー誕



「シーザー!」
「なまえ!」

その大きな身体に飛び付けば難なく抱き留められる。私はこの瞬間が何よりも好きだ。

「ああなまえ、久しぶりだな。会えない間も君が愛しくて胸が張り裂けてしまいそうだった」
「シーザー、数日来れなかったくらいで大袈裟だよ」
「大袈裟なもんか」

離れようとする私をぎゅうと一層強く抱き締めてからシーザーはその腕をほどいた。
お互い学生で毎日会えるわけではない私達のデートは決まってこの噴水の前から始まる。初めての時から変わらず、ケンカをしたときの仲直りだってこの場所でしていた。
噴き上げられた水が日の光に反射してきらきらと輝く。

「今日はシーザーの好きなものいっぱい用意したからね」
「もうリンゴの解体ショーはやめてくれよ?」
「あはは、どうしよっかな」

去年行ったパフォーマンスはやはりお気に召さなかったみたいだ。当然だ、彼はリンゴを剥く音が嫌いだから。
あのときは悪戯心にそそのかされるまま披露したらちょっとだけ怒られてしまった。それでも全然懲りていない私は今日までまたやるかどうか悩み続けたが、当人に見破られてはしょうがない。やめることにしよう。

「シーザー」

どうか、来年もこんな日を迎えられますように。

「誕生日おめでとう!」

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