願わくば 11


いつも通り広い台所に立って野菜をきざんでいると、玄関の戸が開く音がした。承太郎が帰ってきたのだろう。

「おかえりなさい」

言いながら承太郎を出迎えるため玄関に向かうと、予想外の人物がいて固まった。
柔らかそうな栗毛と、承太郎と同じ薄い翠の瞳。
――この人がお母様か!

「ち、違うんです怪しい者じゃないんです、えっと私は承太郎くんが」
「あら、もしかしてあなたがなまえちゃん?承太郎から聞いてるわ」

……私は何も聞いてないぞ承太郎、と一人叫びたくなった。


その後すぐに承太郎も帰ってきたので、改めて挨拶をする。

「はじめまして、みょうじなまえです。承太郎くんにはお世話になってます」
「よろしくねなまえちゃん。承太郎がこんなに可愛い子を連れてきてくれただなんて嬉しいわ! さっきなまえちゃんお料理してたけど、私も一緒にしていいかしら?」
「はいっ! もちろんです!」
「キャー! 娘ができたみたいだわ! そうだ、よかったら私のこと聖子お母さん、って呼んでちょうだい?」
「はい!」

若々しく可愛い聖子お母さんと二人できゃっきゃとはしゃぐ。すると承太郎が私の肩をぐいと引き寄せた。

「……そういうことだ。頼んだぞ」
「もちろんよ、承太郎!」

この二人の会話でどんなやりとりがなされたのかいまいちわからなかったけれど、歓迎されていることだけはわかった。なのでまぁいいかと思うことにした。

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