願わくば 10


扉をはさんで私と承太郎は向かい合う。
承太郎のスタンド講義を受けてスタンドの概念をなんとなく理解した私は、実際にスタンドをってみることになったのだ。

「この扉は十中八九お前のスタンドだ。消すなり別の場所に繋ぐなりやってみろ」
「そんなこと言われたって……!」

扉越しに承太郎の低い声に急かされるが、私はうんうんと唸るばかりで感覚を掴めない。
目を瞑って五分ほど奮闘していると突然、正面からゴトンと重い音が落ちた。

「えっ」

驚いて目を開けると目の前の扉がない。あるのはクローゼットの奥の壁だけで、扉はきれいさっぱり消え失せていた。

「うそ、承太郎ー!? 」

承太郎の家に繋がる唯一の(外からも行けるのに)道が失われたような気がして途端に焦りが込み上げる。しかしいくら声をかけてもクローゼットからの返答はない。

「嫌だ、承太郎!」

そう叫んだとき、背後から先程と同じ重い音が響いた。振り返ると私のベッド脇に同じ扉が出現している。慌てて扉を開ければ薄暗い部屋に繋がっていた。
大量の書物が収められたその部屋を、私は一度だけ見たことがあった。広く複雑なこの家で迷わないようにと承太郎が案内してくれたことがある。ここは書庫だ。
急いで書庫を出て、承太郎の部屋へ向かう。それまでの廊下がひどく長い。
幸い迷わずに承太郎の部屋まで辿り着き、襖を開ける。

「わぁっ!?」

その途端、視界が青に埋め尽くされる。承太郎のスタンドだ。私はスタープラチナに抱き上げられていた。承太郎と同じ力強い腕だが、やはりその手は優しい。まるで壊れ物を扱うような抱え方に内心戸惑っていた。
部屋にいた承太郎のもとまで運ばれ、降ろされる。

「えっと……スタンド、使えた……のかな?」

承太郎は溜めた息と一緒に、やれやれだぜと呟いた。




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やれって言ったのは承太郎なのに、いきなり扉が消えて承太郎は途方に暮れてました。
そうしたらいきなり部屋になまえが飛び込んできたものだからびっくりして思わずスタンド発動。

とりあえずはスタンド練習というか解明の話。

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