ひとまわり 3
私と典明は付き合っているわけだけど。開きすぎた年齢差はちょっとばかり問題がある。
「ねぇねぇなまえ! あの人、彼氏?」 そうだよ、とは言いたいけれど。 「違うよ、親戚のお兄さんなの。いろいろと面倒見てもらってるんだ」 「へぇ〜」 友人とのたわいのない会話でも誰に聞かれているかわからない。公にして困るのは典明だけではないのだ。
「なまえ、お兄さんカッコいいね! 紹介して!」 「ごめーん、お兄さん婚約者いてさ」 このやりとりは何度目かな。さすが、典明は中学生にもモテて困る。
「典明、他に恋人つくらなかったの?」 休日のソファの上。好奇心で聞いてみたらたいそう驚いた顔をされた。そんなに意外だっただろうか。 「私と再会するまで13年もあったのに」 「なまえを諦められなかったんだ。13年もずっとね」 「ふーん……」 眼鏡をかけて本を読む姿を眺める。その眼鏡は再会したときにはつけていた。 「どうやって私を見つけたの?」 「それは秘密。財団が関係してるとだけ言っておくよ」 それはほとんど答えなんじゃないか。言うほど気になっていたわけでもないから追求はしない。 「ちょっと、なまえ」 整った顔から眼鏡を取ると少しだけ咎めるような声で私を見る。 「ん、やっぱりない方が好き」 低い度の入った眼鏡をかけてみると、少しぼやけた視界に典明が見える。 ふと、典明の顔が近付いた。 「大人をからかうんじゃありません」 顔が離れて、眼鏡も奪われていく。 「手、出さないんじゃなかったの」 「時間の問題だって言っただろう?」 そうさらりと言われてしまえば、私ばかり翻弄されているみたいで少しつまらない。 でも、今のは君が悪い、なんて呟いた典明の表情に全部許した。 戻る
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