ひとまわり 2


「……ねぇ、典明」

恋人との再会の抱擁の後、以前のように顔をあげてキスをせがむ。

「ダメだ」
「どうして?」
「今、僕は君の保護者だ。君が高校を卒業するまでは、そういうことはしない」
「えー」

はっきりと突っぱねられてしまった。

「それと。君、まだ中学生だろう」
「だから? まさか子供にはまだ早いとか言うんじゃないでしょうね」
「そうじゃない。……流石に、犯罪じゃないか」
「婚約してれば問題ないわよ」
「こら! やめなさい!」

体を離そうとする腕を掻い潜って唇を寄せようとするが止められた。

「今さらカタブツぶらなくていいじゃない。あの頃はホテルの日は連日連夜……」
「若かったんだ!」
「その若さを今発揮してよ。若さで片付ける関係じゃなかったから、典明は私をここに置いたんでしょう?」
「その通りだが、それとこれとは話が違う。これは僕なりのけじめだ。とにかく! 君が高校を卒業するまでは一切手を出さない。キスもだ!」
「じゃあ一緒に寝るのは?」
「ダメだ」
「……わかった」

しょんぼりと肩を落としてベッドから降りる。扉を閉める前に私は呟いた。

「独りは寂しいな……」
「っ……」

他でもない両親がいなくなってしまったからここへ住むことになったのをお忘れではないだろうか。

「……わかった。一緒に寝よう」

恋人にちょろいとか思っちゃダメだ。

「ただし僕は絶対に手は出さないからな」
「……ねぇ、そんな調子ならさ、私が思い出さなかったらどうするつもりだったの」
「君が僕を好きになるまで我慢するさ」
「今は我慢とかする必要ないよね?」
「……そうだな、時間の問題だ」

窓の外が白み始めている。夜が明けるようだ。

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