グランギニョル(前)(グロ・不気味・退廃的)(男4・女2・不問2)
あらすぅじー*時は明治?大正?それとも未来?少なくとも現在ではないことは確かの、どこか知らない、どこなのかわからない、仮想世界の仮想の時代のお話。
少年たちの残酷人形物語。
猛進、盲信、妄信せよ、少年少女、踊り狂うは赤い靴の少女。
さあてさて、皆々様が望む結末になる可能性は?
*****
至純:王に仕立て上げられた高校2年生。夢見る少年少女たちのあこがれのドライモンスタァ。男。
空:騎士のふりをした道化師のようなそうじゃない何か。高校2年生。男。
名執:退屈だ退屈だって言うなら少しは動こうか(にっこり)。享楽的な高校3年生。男。
有海:王様に忠実な犬。ネズミ。永遠に黙ってればただの人。従うことに興奮する変態。男。
メア:きょうらくてきなおんなのこ。ろりーた風味のばけものしょうじょ。女。
ユナ:死んだはずの女の子。頭がいいのにバカのふりをするのはみんな馬鹿だからね、しょうがないね。女。
??:?????!?????、?????。????????…
(文字はかすれていて読めない。性別不問。)
その他の文章:ナレーションで読め!性別不問。
*****
至純ナレ:液体が滴る音が、暗い路地でやけに大きく響いた。
僕の目の前で、赤い赤い華が、大きく咲いていた。
空ナレ:青天井が俺たちを見下ろし、暗雲が忍び寄る。
名執ナレ:今日、この日、我らは、ある一つの秘密を共有した。
至純:それがこの国の法律で裁けることのない罪だと知っていて、
空:これがこの国の塵芥を集めて捨てることのできる解決法だと知っていて、
名執:そうして、どれでもなく、秘密を共有するということしか出来なかった我らは、
至純:果たして、「あれで正解だったのだ」と胸を張ることができるのか…。
―…。
ユナ:ねえ、しず。
至純:ん?なんだい?
ユナ:ここ、わからないの。おしえて?
至純:教えても君には無意味じゃァないか。
ユナ:ひっどい!
ユナは頬を膨らませ、教科書を持ってそっぽを向く。
至純はその様子に溜息を吐いて、席を立った。
ユナ:どこ行くの?
至純:君に言ったって仕方ないんだが、下校時間だから家に帰る、それだけだ。
ユナ:帰るの?ユナにお勉強は教えてくれないの?赤点取っちゃうよ?
至純:本当は僕よりも頭が良いくせに、馬鹿のふりをするのはやめてくれ。
まるで
道化師のようじゃァないか、僕が。
ユナ:うふふ。だってしずかわいいんだもん。教えてくれるとき、とてもわかりにくいの。
至純:ほォら。
至純はふん、と鼻で笑いながら言葉を告げ、教室から立ち去ろうとする。
ふと、ユナのほうを向けば、ユナは笑いながら至純を見ていた。
至純:待てよ?どうしてお前がいるんだ?
ユナ:うふふ。
至純:お前は、僕らが殺したはずじゃァないか。
震える声で至純が言葉を紡げば、ユナは身体を左右に揺らしながら楽し気に笑う。
ユナ:うふふ。これは現実に起こってることじゃァないんだよ、ワトソンくん。
至純:それじゃァホームズ、教えてくれよ。
SE:きーん、こーん…
鈍い鐘の音が聞こえ、至純は指をぴくりと動かした。
瞬間、誰かの声が聞こえた。
空:おいっ!おいっ、聞こえるか!しず!シズミ!
至純:…、ん、う、……ここ…は?
空:あァん?お前、ここでずゥっと寝てたンだよ!俺が起こしに来なかったら、教師が来るまで寝てやがったんじゃねェか?
至純:…そうか…。それで、うーくん、君が僕を起こしに来たということは、”時間”かね?
空:あァ、そうだ。分かったら早く来い。名執もメアも待ってる。
至純:やれ…、僕は低血圧なんだ、すぐに動かさないでくれたまえ…。
空:キリキリ歩きやがれ、しず。
至純:はぁ…、うーくんは、僕に対して冷たくないかね?
至純はバッグを持って、空についていく。
地下の階段を下っていくと、そこには数名の男女と、一つの棺桶が置かれていた。
そうして一つの棺桶の中には白い花びらが敷き詰められ、一つの白骨の頭蓋骨が白い花びらの中に埋もれたままガラスの蓋をされ、ただ静かに置かれていた。
その一つの棺桶を見下ろすがごとく、舞台の上に椅子が一つと、ブラウン管のテレビが置かれており、ブラウン管のテレビは、白い部屋を映し出していた。
そうして一人、口を開いた。
名執:遅い、我は待ちくたびれたぞ。
メア:全くだねェ…、大方、シーザーが寝てたんでしょォ?
空:あァ、その通りだ。
至純:やれ…すまないね、アルミ。
有海:……別に。
有海はふい、と顔を背け、至純はバッグを空へと渡し、椅子に腰かけた。
そうしてゆるりと息を吐き、前髪をゆっくりとかきあげる。
それはさながら、怠惰な王のように。
至純:では、報告をしてくれたまえ。諸君、本日は?
空:今日は三人、こっちに近づいた。
有海:そのうち一人、部屋に入った。
メア:二人は罠にひっかかったまま、だよォ…うふっ!
名執:ああ、我はいつも通り、退屈で死にそうだったとも。
至純:なるほど、なるほど。では、罠にひっかかった哀れな子兎を処刑したいものは挙手をせよ。
名執とメアが手を挙げる。
空と有海は首を横に振り、至純は口を弧の形に歪め、指先を一つ立てた。
至純:ならば、メアと名執は子兎を処刑せよ。いつも通り、オーダーは一つ。
メア:われらが女王に
名執:甘美なる叫び声を!
二人は楽しげに声を上げ、弾んだ足でどこかへと向かう。
名執はため息を吐いて微笑み、有海は至純へと跪いた。
有海:……、部屋の豚は?
至純:ん、ん……まあ待て、…、…おや、女王は…、腹を空かせたようだ。
至純は、愉快そうに口を開いて、悦に浸ったような笑みを浮かべると、リモコンを一つ手に取って、スクリーンを天井から降ろすと、もう一回リモコンのボタンを押して、スクリーンに、自らが見ているある部屋を映し出した。
真っ白い部屋の中、一人の女がふらふらと身体を揺らしながら部屋の中を歩き回る。
服は、花柄だったのだろう擦り切れたワンピースと、膝まで長い黒髪を鬱陶しそうに払い、覗く足は裸足で、ギリシャ型をしていた。
そうして、女はカメラのレンズのほうを向き、にいいい、と、口が裂けるような笑みで笑った。
ぱく、ぱく、ぱく、と、金魚が餌を欲しがるように口を動かす。
??:お、な、か、が、す、い、た。
至純はそれを見ると愉快そうに口元を歪めた。
有海:…豚は、餌に。
至純:女王がお待ちかねだ。早めに解体してくれ。あっくん、すまないね。
有海:…いいえ。おれは、あなたに、永遠の誓いを捧げましたから。
至純:傀儡なんぞに誓いを捧げるんじゃァない…、と言いたいところだが、気持ちはありがたい。すまないね、あっくん。頼んだよ。
空:…、俺も手伝ってやろうかァ?
有海:………いい、おれ、ひとりで…できるから。
空:そうかい。気ィ付けろよ、豚は力が強そうだ。…っつっても、お前の怪力に勝てる奴なんて存在しねえと思うけど。
空はふ、と何かをあざ笑うように、哀れむようにそう告げた。
有海は無言で、ネックウォーマーを口元に当て、どこかへと歩き出した。
至純は背もたれに背を預けると、大きく息を吐き、リモコンのスイッチを押すと、スクリーンと映し出した映像を戻した。
空:教祖様は本日もお疲れのようで。
至純:哀れむのなら、うーくんが教祖様役してくれたら良かったじゃァないか。
僕にはだね、誰かを率いることなんぞできやしないんだよ?
空:まあ、確かに、名執の奴は退屈屋で享楽的だし、メアは論外だし、有海は誰かに従わないと生きていけねェようなやつだから俺がお前に任せたんだがよォ。
至純:わかっているのなら、なんで僕が教祖様役なんだね?うーくんだって教祖様役にはぴったりだろう?
空:あァん…?そんなの、決まってンだろ?…俺より下のやつが上にいるって思うと、ぞくぞくすっからだよ。
至純:…やれ…まったく、うーくんは、変態だね。
空:そりゃ全員おんなじだ、オンナジ。
至純:…そうだね。
真っ白な棺を見下ろしながら至純は呟くように告げた。
その棺の中に入っているのが一体何なのか、それは創立者である自らと、空と、名執の秘密だ。
柔らかな自らの頬に手を当て、赤い肉を貪り食らう女王をテレビの中で見つめながら至純は痛い表情筋をほぐすように頬に手をぐりぐりと動かした。
女王が口元を赤く染めながら、レンズの向こうの自らに口を開く。
??:おい、しい。
そうして至純は笑顔の仮面を外して、無表情の素の表情で告げた。
至純:…それは、良かった。
空は部屋の隅にあるオルガンに指をかけ、ゆっくりと腱を叩く。
不協和音が部屋に響き渡り、そして同時に、悲鳴がまるで、歌を歌うように、聞こえた。
至純は、いつもの願い事を心の中で呟いた。
至純(ナレ):ここが、いつまでも、僕らの、「狂気」の母胎でありますように。
不協和音が部屋に響き、悲鳴は歌声になり、まぶたを閉じて聞くのは至上最悪の狂気の音楽。
―…ああ、まさにこれこそ狂気!なんてグランギニョール!
それでは皆様、一旦休題でございます。
息の音が止められぬよう、ごゆるりと…お休みくださいまし。
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