その日、律はべろべろに寄って帰ってきた。
バイト先での飲み会だから、と言われていたが深夜12時を回って帰ってくると思わなかった。この分では夜食は、明日に回した方がいいな、とこちらにもたれ掛かる律を寝室へ運びながら思った。

「ん、」

律の部屋のベッドまでつれてきて、さて寝かせようと思った時だった。引っ張られるように、自分も引き倒され、そのままガッチリホールド。シーツの感覚と律の体温が自分を包む。
酒が入っているからか、律の体温は高かった。

(律、律 起きて、律)

何度か手加減しながら叩くと律は目を覚ます。
その目は酒が抜けきらず、ひどく眠たそうだった。

(離して、律)

ジェスチャーで指し示した時だった。


「やっぱり、あんたじゃないとダメだ」

酔っている割りには不思議な位ハッキリとした声で、律は口を開いた。不思議と背筋が震えた。

(律?どうした、って)

律の手は自分の服をまさぐっていた。そして、律の 生殖器が元気になっている。

(ちょっと待って、律。待って、起きて律!)

ぐいぐいと近づいてくる律の顔を遠ざけようと押したときだった。何だか、妙な匂いがした。なんというか、自分の芯を揺らすような甘い匂い。

(律、何飲んだの?)

必死にジェスチャーで伝えようとするけれどだんだんと熱い息を吐く律は気づいてくれない。まずい、この分では貞操の危機だ。
なんとか抜け出してしまわないと、ともがいてみるが下手に動くと律が怪我してしまうかもしれない。
わたわたとしているときだった。
律の手が、自分でも余り触らないような場所まで行って固まる。

(待って、本当に待って律)

食べ飲みが出来ないから、排泄ももちろん無いわけで。それでも不思議なことに自分に性器も排泄器も備わっている。そこまで律の手は延びている。
ついでにいうと律の生殖器はその、ビンビンに張りつめている。

(ちょっ、ちょっと律?)

ひ、と無い喉が鳴る。律の手で自分のものがしっかりと握られ、本格的にまずい。

(止め、ダメだって律。後悔するって、律、ねぇ!)
「あのさ、飲み会でスッゴいきれいな人にあって」
(へ?)
「その人から、ついでもらった酒を飲んだら、何か急にそのムラムラしてきて、うん」
(ちょっと待って、それって何か盛られてる)
「『寂しいからヤらない?』って言われたんだけど、何だかあんたの姿が浮かんできてさ。そしたら、その人に『これあげるから、愛しい人とやって来なさい。私、修羅場嫌いなの』って言われて」
(ひ、ちょっと、律 待って、お願い少し待って)
「これもらったんだ。あとやり方も聞いたー」

と、目の前で出されたのはピンク色の、明らかにそういう意図で使う液体。液体名は恥ずかしくて考えたくない。正直。ふと、よく見てみれば、愛しいあの子とつながらない限り止まらないよ!サキュバス印と書かれていた。ふざけているほかない。見つけたら文句の一つでも言わないと気が済まない。

「あ、ヒアルロン酸、入ってるって」
(そういう変な配慮はいらない!)

ちょっとだけとぼけたように口を開く律は、もう我慢できませんって顔に書いてある。
何度か足で蹴ろうかと思ったけど、自分が本気で蹴ったらたぶん律が死ぬ。力加減しようにも律が全力のせいで抵抗ができない。

どうしよう、どうしよう。少なくとも、正気に戻った時に「男と性交しました。さらにいうなら首がありません」とか律がトラウマとかで死にかねない。ローションを音をたてながら指で何かしている段階で自分がトラウマまっしぐらなんだけどそれはさておいて。

えへーと良い笑顔で律はこちらを見る。
釣られて、無い表情を動かしてみるけど、わからないんだろうなぁって思った時だった。
ぬるっと、嫌な音と圧迫感が。

(ひぎゃーーー!??)

自分の穴にローションつけた律の指が突っ込まれた。ぬるぬると、形容しがたい。気持ち悪い。

「んッ、何かあんたの中、気持ちいいんだなぁ。だんだん、熱くなって」
(聞きたくないから、実況中継しないでーーーー!!)

正直、ヒアルロン酸じゃない何かが絶対入ってるって確信できる位、身体が熱くなってきてる。それはわかるんだけど、その事を律に実況中継されるのは流石に恥ずかしい。無い耳を塞ぎたくなる。

弄って来る指が2本になって、3本辺りでもう気持ちがいいとか悪いとか横に置くレベルになってきた。ぐずぐずに熱がくすぶっている。服を汚すとか汚さないとかもう無いようで、自分の服も脱がされてしまった。一抹、女性相手じゃなくて良かったかもしれないとは思った。

「ん、やっぱり、あんたの中もすっごくいい、柔らかくてそれでいてきゅっと締めてもきて最高」
(だから、実況中継しないでって……、)
「だから、だから…………ダメだって!!」

律の手が止まる。そして、おもむろに立ち上がると…
思いっきり壁にがんがん頭をぶつけた。


(り、律―――!!?)


明らかにおかしな方向に走っている。どう考えても盛られた何かが頭の方まで走ってるとしか思えない。数度の殴打のあと、きゅう…と小さな声を上げて、額から血を流しながら律は倒れ伏す。
慌てて駆け寄ろうとして、自分の腰が抜けていることに気が付いた。自分の中の妙な感覚もまだ渦巻いている。けれど、なんとか無視をして、適当に羽織り直してそのまま近寄る。見た目以上に律の額の傷はさほど深くなかった。

(よかった…)

血が止まるまで、ティッシュで患部を抑えると、律はうなされている。自分の妙な感覚があの程度であれば、あの奇妙な言動に至った律はどれくらい渦巻いているのか。ちらり、と下半身の方を見てやれば、強制的に気絶を起こした律の理性に反して収まることなく張り詰めている。正直、ものすごく、その、辛そうなぐらい。

(これ、下手したら明日の朝までってまずいんじゃないかな…)

今は深夜で、朝までは長い。
今、ここにいるのは律と自分しかいない。そして、下手に誰か呼んだら律が社会的にまずい。それぐらいは少し考えれば、わかる。

(おちつけ、大丈夫 ちょっと鎮める程度だから 律もノーカウントにしてくれるって)


覚悟を決めて、素手で律のものに触る。

(ひ、ひぇええ……)

熱い、というかなんというか。他人のものに触れるのは初めてなわけで、手の平全体で感じる感覚は形容しがたい。妙にぞわぞわと背筋が震える。といっても、普段どうやっているかなんてまったくわからない。というか、ここから先どうすればいいんだろうか。あまりに今更なことに生前がさっぱりわからないどころか、料理や文字をこの間ようやく習得した次元にいるのに、どうにかできるって思う方がおかしいんだろう。
とりあえず、さっき律が触っていた方法で、ちょっとやってみよう。

(ま、まずは)

両手で添えてみる。さすがに直視するのは恥ずかしいから少しだけ視界をずらす。で、何度か上下に動かしてみたり、その上の部分を触ってみたり。そのうちに、だんだんとぬるぬると分泌物が溢れてくる。ええと、ええとと試行錯誤しているうちに、びゃっと何かが散った。

(うわ?!)

頭がないから顔にかかるとかはなかった。けれど、胴体にはかかった。少しだけ、ほっとしたけれど、手元を見た瞬間、顔があれば真顔になったかもしれない。

(り、律……収まらないの?)

律は、どうやらまだ元気らしい。というか、収まるどころか悪化した気すらある。いやいやいや、待ってくれ。これ以上どうしろと。この状態の苦しさは何となくわかるけど、だからと言ってこれ以上何も自分ができることは…と考えて後孔の違和感がじくりと存在を訴える。


(ま、まさか…?いやいやいや、これ以上はもうまずいって……)

けれど、律が必要にやってきた、ということはその必要があったってことだ。つまり、その後孔による性交渉をだ。正直、自分の中もうずうずしている。律にあれ以上のことをしてもらいたかった。あれ以上がさすものは少しわからなかったけれど、…うん。

(いや、いくら何でも、サイズ的に無理じゃないかな…な、悩んでも仕方ないんだけど…うう、口とかあればまた違うんだろうなぁ……いや、それもだいぶトラウマになる…深刻な方向のトラウマに……)

…覚悟を決めるほかない。

(ごめん、律 起きないでね…)

考えたくない、と思考を閉じながらも、律がケガしないようにだけ気を付ける。後孔にそっと律の先を当てるとぬる、と体液がわかった。それが妙に生々しくて、少しだけ怖い。

「ん、っ」

律が声を漏らす。それ以上に自分は声を出すことすらできなかった。先っぽだけ、入った。奇妙な圧迫感、ぐるぐると熱が自分の中にこもる。本当に、これでよかったの?と問う声が何度もなびいては消えていく。どうしよう、どうしよう。気持ち悪いのに、もっとこの熱がほしい。息をして、小さくはいて。そうだ、律に謝ることすらできないんだとなんだか悲しくなった。思考はごちゃごちゃでそれでいて、まとまりが付かない。

(りつ、りつ)

きっと自分に口があれば何度でも呼んでいた。泣いたかもしれない。
ごめん、と泣きながら謝っていたかもしれない。
それほどに、気持ちがよかった。自分が、気持ちよかった。律のことは言い訳に過ぎなかった。自分がしたかっただけだ。
律のものを奥まで少しずつ導けば、熱が心地よく気持ちが良い。暖かい、暖かくて、幸せだ。

律のものが、ひときわ大きく震える。

(あ、)

でた、とはっきりと分かった。ずる、と抜くと不思議なくらい律のそれも自分の妙な疼きも収まっていて。

後孔から垂れてくるそれの感覚が全部終わったんだと教えてくれた。

発情プライベート



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