「あれ、イヤミじゃねぇか…今日は金あるんだな」
「ったく、ミーはどこぞの六つ子みたいに踏み倒すなんて馬鹿なことしないザンスよ」
「野良猫と争ってた奴が何言ってんだよ…ほらよ」
「それと、あとそこら辺にあるのも全部寄こすザンス」
「あー、今日はほんとに金あんだな…って、きょろきょろしてどうしたんだ?」
「…いや、ミーにたかろうとする六つ子の嫌な予感が」
「いくらなんでも椅子の下からは出てこねぇだろ、ひっくり返してんじゃねぇよ」
「ん、今日はあの六つ子は来たザンスか?」
「来てねぇぞ、…あ、昼間カラ松と十四松には会ったか」
「そういや、ミーのところにも来たザンスね」
「ん?イヤミのところまで行ったのか」
「そうザンスよ、おかげで一レースおじゃんになってしまったザンス」
「で、要件ってあれか?」
「ったく、いい年して兄弟が一晩帰ってこないからって探すのはおかしいザンス、子供じゃあるまいし」
「あいつら、飲んだ後どこ行きやがったんだろうな」
「どうせ、どっかでロクでもないことしてるに決まってるザンス。心配するだけ無駄無駄〜、熱燗ひとつ」
「ま、心配っちゃ、心配だな。ほらよ」


イヤミは熱燗に口を付けるといくつかのおでんを食べ始める。
と、思い出したようにチビ太は口を開いた。


「そういえば、山の上のあのぼろっちい神社、ついに取り壊されるらしいぜ」
「へ?…ミーの良い寝床だったあの神社が?!」
「おう、老朽化も激しいからな。新しい神社も立ったし、危ないからってな。こっちの土地神祀ってる神社も新しくすりゃいいんだけどな」
「そんなのもあったんザンスね」
「おう、…ま、とっくに神社自体はなくなってるし、いくつか社があるぐらいだけどな」
「ま、ミーには関係ないザンス。ちくわぶと…」
「おい、ホントに金あんだろうな」


のんきにおでんを楽しむいつもの光景は過ぎていく。いたって普通の街の光景に、変わり一つない。平和な一日だった、とチビ太は一日を無事に終えたことを小さなため息とともに迎えた。街を照らす明かりには、怪しい影は一つとしてなかった。

なに、一つとして。

間 3 〜イヤミとチビ太



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