ランプを灯した先に在るものは、



試験は無事に終わった。
未来の後輩たちが去ったあと、俺と日向は他の片付け係と一緒に机を片付けていた。

「日向、」
「あ、?」
「バスケ部に後輩入るかな」
「あー、どうだろうな」
「たくさん入ってくれれば良いよな」
「根性ねぇ奴はダメだな。本気で全国狙うやつじゃない限りは」
「全国、か」


日向は、そう言いきるとそのまま外へ目をやった。来年、間違いなく全国を狙うならキセキの世代と戦うことになる。監督が考えたメニューをこなしながらもふと考えることがあった。嫌な暗雲のように、木吉がいないことで誠凛がパワーダウンしているという事実が晴れてはくれない。俺は何ができる。単純に力をあげる以外にもう一歩踏み込んだ何かが欲しかった。


「あ、日向。ちょっと俺、見回りいってくるわ」
「おー、行ってこい」


ヒラヒラと手を振る日向はどう思っているのか。さっぱりとわからなくて、俺一人が妙な立ち位置の上にいる。バスケ部の中で、木吉の事情を知っているが日向や監督ほど密に付き合えるような関係ではない。誰だって、親友とよくしゃべる友達でだったらヒエラルキーの上に立つのがどちらか迷わず決められる。俺は明らかに二人とは違う場所にいる。
なんとも割りきれなくて、ふ、と静かな体育館へ目を背けたときだった。確かな違和感があった。
なんだ?鎌首をあげた疑問は下がることなく、訴え続けている。そして、階段を降り、体育館へ足を向けたときまだ一人受験生が残っていることに気づいた。薄い存在感で書き消されそうなその受験生は、それでも意思のこもった強い目でそこを見ている。

「そこは体育館だよ」
「……え?」
「もう、片付けの時間が来たから早く見つからないうちに帰った方がいいと思う。……それとも誰かと待ち合わせしてる?」
「いえ。すみません、もう帰ります。ありがとうございました」


小さく頭を下げた彼は、またちらりと体育館を見る。なにか用事でもあるのか、それにしては妙に意思の強い目をしていた。もしかして、と思ったのは、その目をするようなことが度々あるからだろうか。親近感。ただこの一言につきる言葉が口から漏れた。


「なにか気になる部活でもある?」
「あ、はい。あります」
「へぇ、何部?」
「バスケ部です」


そして、その受験生は俺を見た。その時なぜか、木吉に感じた感覚が蘇ってくる。背筋が震えた。


「約束、…いえ決めたんです」
「キセキの世代を倒すって」


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