魔法少女と閻魔大王
「着きましたよ、ここが閻魔殿です」
「うひゃー…」
生まれて初めて見る閻魔殿の大きさと厳つい造りに京子は圧倒されていた。
しばらく眺めていたが鬼灯の、置いていきますよの一言でハッとなり慌てて鬼灯の後を追う
長い長い廊下をひたすら歩く
鬼灯にとっては普通に歩いているつもりだろうが、歩幅が小さい京子は早歩きしないと置いていかれそうだった。
「ま、まだ着かないんですか?」
「あと少しですよ。体力ないですね」
息切れした京子を見て、鬼灯は少し歩くペースを落とす。
京子が少しずつ息を整えていると、大きな広間のような開けた場所に着いた。
「ただいま戻りました」
「あ、鬼灯くんお帰り〜随分遅かったねぇ」
閻魔大王の目前に行き、帰りを告げる鬼灯
ふさふさの髭を蓄えて体は大きく、熊のような見た目の閻魔大王に怖気付いてしまった京子はサッと鬼灯の後ろに隠れた。
「ん、その子は誰?見慣れない子だねぇ」
「ほら挨拶なさい、閻魔大王ですよ」
鬼灯が後ろに隠れる京子を前に出そうとするが、京子は鬼灯の着物の裾をしっかりと握って離さない。
「大丈夫です、デカい図体ですが取って食べたりしませんから」
「今ワシの事明らかに馬鹿にしたよね!?」
京子は鬼灯に引っ張られて、おずおずと閻魔大王の前に出た。
「ここで働いてもらう事になりましたので」
さらっと告げる鬼灯に、閻魔大王は目をぱちくりさせる
「えっ、ワシに何も相談なしに!?ワシ一応ここのトップなんだけど…」
「や、やっぱり駄目なんですか…?」
それを聞いてうるうると涙を滲ませる京子。
鬼灯に付いてきたはいいが、半ば無理矢理な形だったので本当は迷惑だったのではないかと実はずっと気にしていたのだ。
「閻魔大王が泣かした」
「えっ、えっ、ごめん泣かないで!ワシが悪かったから!是非一緒に働いてほしいな!」
「ほ、本当ですか?迷惑ではないですか?」
「全然!むしろ大歓迎!」
大きな熊のような見た目でアワアワとあわてる閻魔大王を見て思わずクスっと笑ってしまう京子。
「あっ、やっと笑ってくれた〜」
笑顔を見せる京子に閻魔大王も一安心する。
「まぁ、という事で改めてよろしくお願いしますね」
鬼灯が京子に向き直る。
「君ねぇ…まぁいいや…あ、君の名前は?」
「京子といいます」
「へぇ、京子ちゃんか!ここでの仕事は大変だけど頑張ってね」
「はいっ!」
にこっと笑う京子につられて閻魔大王も笑顔になる。
「いいねぇ、こんな可愛い子が居るとここも明るくなるよ〜」
「鼻の下を伸ばすなエロ爺」
「いっ、痛い痛い」
鬼灯が金棒で閻魔大王の頬をゴリゴリと摩る。
「それで、京子ちゃんはどこから来たの?」
鬼灯にゴリゴリされた頬を撫でながら閻魔大王が尋ねる。
そこで、鬼灯がEU地獄から京子を連れ帰った経緯を説明した。
「なるほどね、魔女の修行の一環か〜なんか凄いねぇ」
てへへ、と京子が照れたように微笑む。
「それで、京子ちゃんはどこに寝泊まりするの?」
「先程女子寮に連絡したのですが、今空きがないみたいなので
しばらく私の隣の部屋を使ってもらいます」
「あぁ、そういえば空いてたねぇ」
「では、京子さん行きますよ」
閻魔大王が京子にまた明日、と手を振ると京子は笑って返してくれた。
広間を後にする二人を見送り、明日から楽しくなりそうだなぁと思い鼻歌を歌いながら珍しく真面目に仕事に取り掛かった。
先程と同じ長い廊下だったが、今度は割とすぐに目的地に辿り着いた。
鬼灯のマークが付いた部屋の隣。
鬼灯はその隣の部屋の鍵を懐から取り出し、鍵を開けた。
部屋には空っぽの本棚と、簡易的なベッド。
他にはシャワールームと洗面台
少し埃っぽい感じはあるが、定期的に掃除されてるのか綺麗な部屋だった。
ほー、っと部屋をぐるりと見回す京子。
「私はまだ仕事がありますので、荷ほどきでもしてゆっくりしてて下さい」
また来ます、と言って鬼灯は部屋を出て行った。
一人になった京子は、殺風景な部屋を見回して奥にあるベッドに腰掛けた。
ふぅと一息付くと、疲れもあるのか段々と瞼が落ちてくる
そのまま横になり京子は目を閉じそのまま寝入ってしまった。
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