魔法少女と鬼 そのに


「なるほど…話は分かりました」


リリスからの説明を聞き、先程ベルゼブブに投げたティーカップの代わりにメイドが新たに煎れてくれた紅茶を一口飲んで鬼灯が口を開く。



「ですが、薬学の勉強だったら私よりあのアホ神獣の方が向いてると思いますよ」


それを聞いてリリスはうーんと少し表情を曇らせた。

「それはそうなんだけどねぇ…」


そう言うとリリスは京子をチラリと見る。
つられて鬼灯も京子の方へ目を向けた


つやつやとしたプラチナブロンドの髪に同色の大きな瞳、血色のいい桃色の頬。
ワンピースから伸びるスラリとした手足はあまり日に当たる事がなかったようで雪のように白い。



「まぁ、間違いなく食べられるでしょうね。」

「ひぇっ…!」

鬼灯から出た物騒な言葉に一気に顔を強張らせる京子



これに魔女っ子属性まで付くなんてチートだな
と今まで黙っていたベルゼブブがニヤリと笑って付け足した。


「そこなのよねぇ…紹介する手前、ペロって食べられちゃいましたじゃ彼女に怒られちゃうわ」


「わ、私…まだ死にたくありません…」

食べられるという意味を履き違えている京子は涙目で懇願する。
それを見た大人三人は深くため息を付く。

「京子はあまり外に出ないから外の世界の事をあまり知らないのよね?」

リリスにそう言われて京子はこくりと頷いた。

「はい…外の世界の事はマリン様持っている本と、マリン様が話してくれるお話でしか知らないのです」

しゅんと項垂れる京子に良心がチクリとする鬼灯。


リリスを見ると、懇願するような目で鬼灯を見て来た。

「ねぇ鬼灯様、いつも地獄は人手が足りないと言ってらしたわよね。京子は気がきくし頭も良いし飲み込みも早いから、きっと鬼灯様のお役に立つと思うわ」



「あのっ、一生懸命頑張ります!だから、私を連れて行ってくださいっ!」


京子は捨てられた子犬のような潤んだ瞳で鬼灯を見る。


決まったな。ベルゼブブは確信した
そして上は大水下は大火事の件を思い出していたのであった。


二人の女性からの熱い視線に観念したのか、鬼灯は京子に向き直った


「分かりました。京子さん、しっかり働いてもらいますよ。」


「は、はいっ!」

途端にぱぁっと明るくなる京子。
本当にコロコロとよく表情が変わるな、と鬼灯は思った。




仕事の休みや空いた時間で薬の事を。鬼灯の元で働きながら地獄の事を教えてもらうという事で話はまとまった。



丁重にお礼を言う京子を横目にベルゼブブは鬼灯に
「朴念仁に見えてお前が一番危険そうだけどな」
と耳打ちをした。

「さぁ、どうでしょう。さて、京子さん行きますよ、まだまだ地獄に沢山仕事を残して来ているんです」

そういうと鬼灯は、椅子から立ち上がり帰り仕度をした。

「はい! リリス様、ベルゼブブ様、本当にお世話になりました!サタン様にもどうぞよろしくお伝え下さい」

「京子、地獄でも頑張ってね。無理しちゃダメよ」

リリスは京子の頭をよしよしと撫でる。

別れの挨拶を済ませるのを見届けた鬼灯は、それでは と言って部屋を後にした。
京子は最後にぺこりと頭を下げると鬼灯の後をついて行った


耳打ちをした際、金棒でも飛んで来るだろう思って身構えていたベルゼブブだったがそれは杞憂に終わった。
と同時に自分が言った事もあながち間違えではないのかも、と思うがここまで来たらもうどうにもならない。後は京子の無事を祈るばかりだった


一方、鬼灯の後ろをついて行く京子は、地獄に着いたらマリン様に手紙を書こう
なんて呑気にも思っていたのだった。


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