魔法少女と鬼

私の師匠であるマリン様は長い歴史の中を生きる魔女であり薬作りはもちろんプロ中のプロ。世界中の薬剤師が見習うべき存在の魔女である

時々爆発騒ぎを起こしたり、料理を焦がしたりとドジの多い人だったが私はマリン様の元で立派な一人前の魔女になるべく日々修行に励んでいた。



ある日、マリン様がお友達のリリス様に呼ばれて日本という国に出掛けて行った。
マリン様は時々、こうやって色々な国に行っては薬を見て回り、その国独自の薬の事や文化などを教えてくれるのだ。

今回も日本から帰ってきたマリン様に新しいお薬の事や地獄という所の話を聞いていた。

すると、マリン様から
京子もそろそろ外の世界に出てみて自分の体で色々な事を見たり経験してみてはどうか、という提案が出た。


百聞は一見にして如かず
日本の諺というものらしい。



マリン様と離れるのは色々な意味で心配だったが、それよりも自分の知らない外の世界というものに惹かれた私はすぐに了承した。


そこからはトントン拍子に事は進み、私の行く先はマリン様とリリス様のオススメ?という事もあり日本の地獄という所に決定した。


「住む所は心配しないで、いい所を紹介してあげるわ」

というリリス様に甘えて、とりあえずリリス様の手配が済むまではEU地獄にてお世話になる事になった。


私は、魔女らしくマリン様とお揃いの真っ黒いローブを着ていたのだがサタン様が

「京子ちゃんにはもっと似合う服がある!」

と言って次の日には私の為にデザインしたという可愛いゴシック調のワンピースをプレゼントしてくれた。
生まれてこの方こんなに可愛い服を着たことがなく最初は恥ずかしかったのだが、リリス様を含むこのお屋敷の女性の皆様はほとんどがそういう格好をしていたので外の世界では逆にローブを着ている方が浮いてしまう事が分かった。

リリス様に連れられてお買い物をしたりベルゼブブ様とチェスをしたりサタン様の着せ替え人形になったりと、楽しく過ごし
そして今日の朝、リリス様が私がお世話になる地獄の方がいらっしゃると言ったので私はお部屋で荷物をまとめて待機していた。

数時間後、メイドさんが呼びに来て私はベルゼブブ様の執務室に通されたのである。
執務室の椅子に座るベルゼブブ様とそのお膝に座るリリス様。
そして物凄い恐い顔をした鬼のお兄さんが無言でずっと見て来るので私はどうしていいか分からずリリス様に目をやり助けを求めた。


「京子、こちらが貴女の面倒をみてくれる鬼灯様よ」

「あっ、はい!初めまして京子と申します、よろしくお願いします!」


私がぺこりとお辞儀をすると、鬼のお兄さんは険しい顔を更に険しくさせてリリス様を見る


「リリスさん、勝手に話を進めないでください。まだ私は預かるとも何とも言っていませんよ」

「ええっ、そうなんですか!」


私はてっきり話が通っているものだと思っていたので驚いた。


「あら、そうだったかしら?」

「まずはきちんと説明してください」


惚けるように笑うリリス様は、私がここに来るに至ったの経緯を鬼のお兄さんに説明し始めた。
マリン様の事、魔女修行の事など説明をするリリス様を鬼のお兄さんは表情一つ変えずに聞いていた。



マリン様が話してくれた地獄の鬼がこんな恐いなんて…
私は初めて見る鬼という生き物にビビっていた。

この先地獄でやっていけるのだろうか…
私は無表情を崩さない鬼のお兄さんの横顔をチラリと見る
すると目線がじろりとこちらに向いて思わず、ヒッという声が漏れる。


私は早くもマリン様の元へ帰りたくなった。



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