魔法少女とはじまり





「ねぇ、鬼灯様お願いがあるの」



目の前にはつやつやとした金髪を揺らし、妖艶な笑みを浮かべる美女リリス

EU地獄に来てはリリスに絡まれる事はいつもの事で今もまた鬼灯の膝の上に座り上目遣いで鬼灯を見上げている。



「私の機嫌を取るより貴女の旦那様のご機嫌を取った方がよろしいのでは?」


瞬間、いかにも高そうなティーカップが鬼灯目掛けて飛んで来た。
鬼灯はそれを軽く避けるとティーカップは壁にぶつかり木っ端微塵になる

ティーカップを投げた張本人であるベルゼブブは舌打ちをして皿を手にするが、どうせ避けられるのは目に見えているので諦めて皿を手元に戻し恨みがましい目で鬼灯を見る



「こいつはいけしゃあしゃあと…
リリスも、こっちに座りなさい!」


「はぁい」


リリスは鬼灯の膝からスルリと降りると、ベルゼブブの膝の上に座り直す。
ベルゼブブはそれに満足したのか、鬼灯が持ってきた書類に目を通しサインをし始めた
何とも書き辛そうな体制だ。



リリスは何時にないにっこりとした笑顔で正面に居る鬼灯を見ると、再び口を開いた。



「鬼灯様に女の子を預かってほしいのよ」



眉をひそめる鬼灯を気にする事なく、リリスは相変わらずにっこりと笑っている。

しかしそれを聞いたベルゼブブは心底複雑そうな顔をした


「えっ、こいつに預けるのか?こんな奴に預けると悪影響しか受けないぞ」


「そうかしら?私は鬼灯様が適任だと思うわ」


話の流れは読めないが、ベルゼブブにバカにされているのは分かった。
鬼灯は手元のティーカップをベルゼブブめがけて目にも止まらぬ速さで投げつける


「ぐあっ!!!」

鬼灯の投げたティーカップを避けきれずに顔面で受け止めるベルゼブブ
幸いな事に中身は入っていなかったようだ。



ベルゼブブの赤くなったおでこを撫でながらリリスは話を続けた。



「鬼灯様にこの前紹介したイギリス冥界の魔女の事なのだけど、覚えてらっしゃる?」



鬼灯の頭には先日リリスに紹介してもらった
ローブを纏い杖を突く、これぞ魔女!という魔女マジカル・マリンが頭に浮かんだ。


「あぁ、その節はお世話になりました。とても興味深いお方でした」

そう言うとリリスはフフ、と笑った。

「今うちで、彼女の所の魔女見習いを預かってるのよ。」


「はぁ、そうなんですか」


マリンとリリスが仕事仲間であり茶飲み友達である事は聞いていたが、それがリリスのお願いとどう繋がってくるのか鬼灯にはさっぱり見当も付かなかった。

「んー、言うより会ってもらった方がいいわ
連れて来てちょうだい」

リリスが傍に立っていたメイドに頼むと
メイドは「承知しました」と言い部屋を出て行った。

「きっと鬼灯様も気にいると思うわ」

にっこりと笑うリリスのペースに今だついていけない鬼灯であった。


暫くすると、部屋の扉をノックする音。
先程のメイドが戻ってきたようだ



「京子様をお連れしました」


「入ってちょうだい、」


リリスが声を掛けると、扉がゆっくりと開き
一人の少女が部屋に入って来た。



日本では滅多に見る事はない艶のあるプラチナブロンドの髪の毛に鬼灯の目は奪われる

黒いゴシック調のワンピースに身を包み
魔女という歳でもなく、まさに魔女っ娘と言われるに相応しい少女は自分を見つめる部屋の主と恐い顔をした鬼に戸惑った顔を見せた。



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