全てを手に入れたい



「おとうさん、おかあさん?」


ピチャ、

部屋に入ると足元には水溜り

その水溜りは、ジワジワと私の足を赤く染めた



嫌な臭いがする
例えようがない今まで嗅いだ事もない臭いは、鼻腔から頭の中を汚染して来る



鉄の臭い

血溜まり








目の前には肉の塊。欠片から、それがヒトだったという事が辛うじて分かる。

京子はその塊をただ呆然と見つめる事しか出来なかった。

かつて、両親だったソレを。


ヒュウと喉の奥が鳴り、急激に喉や口の中が乾いていくのが分かる。



これが私を育ててくれたヒト達なのか
たくさん愛してくれたヒト達…

もう喋る事も、頭を撫でてくれる事もない
ただの塊。


京子はぐらぐらする頭を抑えて血溜まりの中にへたり込んだ。
ジワジワと生暖かい血が服に浸透してくる。






私は一体どうすればいいのだろうか



顔を涙でぐじゃぐじゃにして
両親の死を嘆き、泣いて喚けば良いのか



それとも、
私も両親と一緒に、永遠に覚める事のない眠りに付けば良いのか


それとも、


目の前に立っている


両親をこんな塊にした忌むべき存在を憎みこの手で殺してしまえばいいのか







「鬼灯様、どうして、」


鬼灯様の手からは鮮血が滴っている

私の、両親の血だ



「京子は私を殺したいですか?」



彼はいつだって私の質問にまともに答えた事なんてないのだ。


「貴方は私を殺せない」


そうだ、
忌むべき存在は、私なんかが簡単に殺せるはずがないのだ


私が殺されるのは簡単なのに



無表情の鬼灯様が血溜まりにへたり込んだ私の体を抱き締めた


「好きです、ずっと永遠に」

いつもよりずっと低い声で鬼灯様が耳元で囁いた。
ツン、と血の匂いが一層強くなる



鬼灯様は私の頬に手をやり、顔を上げさせると唇にキスをした。



「ん…」


触れるだけの冷たい唇

その唇を離すと、鬼灯様は口元に薄く笑みを浮かべる



「これで、私と貴方の二人だけです」





ぎゅっと私を抱きしめる腕に力が入った






吐き気がした





end


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