peach peach peach

ポカポカとした暖かい日差しの中、ふわりと香る桃の匂いと、もふもふしたウサギたち
そしてぷにぷにとした幼女が1人と
それを見守るニヤニヤとした神獣が1匹



「うさぎさんもふもふだね!」

京子は小さな手でウサギを抱き上げてふわふわの毛に顔を埋める。


「そうだね、フワフワだねぇ」


その微笑ましい光景に白澤は心癒されていた。


縁あって鬼灯の元で暮らしている京子
殆んどを鬼灯と共に行動しているのだが、鬼灯にどうしても外せない会議が入ってしまい京子を連れて行く事も出来ず、いつも京子を預かってくれるお香も今回に限って都合が悪く
そこで、京子がよく懐いている白澤に白羽の矢が立ったのだ。


「京子に手出したらブッ殺す」
なんて物騒な事を言い残し、かなり後ろ髪引かれる思いで鬼灯は仕事に戻って行った。


残された京子は寂しがる事もなく白澤と一緒に絵を描いたり絵本を読んだりウサギと戯れたりして過ごしていた。


「京子ちゃん、おいしい桃があるから食べようよ」

「もも!たべる!」

京子はウサギを下にゆっくり降ろすとキラキラした目で白澤を見上げた。


「よし、手を洗ってから食べようね」

そう言うと白澤は京子を抱き上げた。

「わたしひとりであらえるよー!」

「そうだね〜でも、水道に手が届かないよ?」

「そっかー!」

京子は納得すると大人しく白澤の首に手を回してしっかりと抱きついた。
よしよしと白澤が頭を撫でると目を細めてくすぐったそうに笑う京子に思わず、可愛いなぁもう…という心の声が漏れる白澤だった。


抱きかかえられたまま手を洗い、そのままの流れで白澤の膝に座り桃を頬張る京子

「おいしい?」

「あまくておいしい!」

京子の口は桃の汁でべちゃべちゃになっている。

「ほら、ちゃんと拭かないと赤くなっちゃうよ」

京子の口を拭いてあげると、こちらをじっと見つめて来た。

「ん?どうしたの?」

「はくたくさまもフワフワなんでしょ?」


京子の言うフワフワとは神獣姿の事を指しているのだなと理解したと同時に、本当に子どもはいきなり突拍子も無い事を言うのだなと思った。



「そうだよ、よく知ってるね」

「ほーずきさまがおしえてくれたよ!」

「へぇ、あいつが…」


あの鬼が自分の話題なんて珍しい事もあったもんだと思っていると

「なんかね!いっぱいめめあった!」

自分が気に入らない絵を見せて説明する辺り、遠まわしの嫌がらせなんだと分かった。


「京子いっぱいめめみたい!」

キラキラとした目で白澤を見上げる京子


「んー…京子ちゃんが大人になったらじっくり見せてあげるよ」

「えー、いまみたーい」

「そう?しょうがないなぁ」


ドォォォン!!!


何て言っているといきなり店の扉が壊れそうな勢いで開いた。
ここの扉をそんな勢いで開ける奴なんて天国地獄を探してもたった一人しかいない


その音に一瞬ビクッと体を強張らせた京子だったが店の中に入って来た人物を見ると途端に笑顔になった。


「ほーずきさまおかえりーっ!」


と京子は白澤の膝から飛び降りて鬼灯に走って駆け寄る。
膝に残った暖かい温度が逆に寂しく思えた。

「京子、あの変態に何もされませんでしたか?」

「…?」

質問の意味がよく分からなかったのか京子は首を傾げる。

「はくたくさま、たくさんあそんでくれたよーっ!たのしかったー!」

「そうですか」

鬼灯は京子の頭を撫でると、そのまま抱き抱えて白澤と向き合う。


「どうも助かりました」

「お前が礼言うなんて気持ち悪っ」

二人の間に火花が飛び散っていると、鬼灯に抱っこされていた京子が白澤の方を向く。


「はくたくさま、またあそびんでくれる?」

「うん、京子ちゃんならいつでも大歓迎」


この短時間で更に仲良くなった二人に、鬼灯は一瞬眉間に皺を寄せると、そのまま極楽満月を後にした。

ブンブンと手を振る京子に手を振り返し、二人が見えなくなると店に戻った。


今日はどの女の子と遊ぼうかな、なんて考えていると
机の上には京子が持ってきた絵本が一つ取り残されていた。
白澤はそれを手に取り棚に並べると、また来るであろう可愛らしい姿を想像した

女の子と遊ぶ気分にもなれず、今日は桃タローと呑みにでも行こうかなと呟いた。





そして、京子の描くネコがいつもの可愛らしいタッチではなく白澤の好猫猫に近い絵になっている事に鬼灯が気付くのはもっと後の事。


END

(はくたくさまのかいたねこちゃん、かわいかったよー!)
(あの白豚め京子に変な影響を…)



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