――ばん! 「あ、ごめんなさい」 誰かにぶつかって、謝ろうとすると、その人は私の肩をがしりと掴んだ。 「佳南っ!!」 「……り、ん」 凛は私の顔を見て目を丸くする。 「何があったんだっ!」 私の様子に少しの怒りを混ぜた顔をする彼に、胸が苦しくなった。 凛は怒ると、口調悪くなるよね。 私、知ってるよ。 「どうして?」 「どうしてって、佳南がメールしたんだろ」 凛が携帯の画面を見せる。 そう、だった。病院を出る前に、迎えのメールを送ったんだ。 「で、何があった?」 「……美沙に会ったの」 「美沙ちゃんに?」 「うん。絶交、してきた」 「…………」 無表情で言う私に何かを感じたのか、凛は黙って泣く私の背を擦った。 私、何で泣いてるんだろう。 美沙と絶交するのが嫌? ならしなければ良かった。 ううん、そうじゃないよね。 今、美沙を許したら、私は前に進めない気がする。 だってそんなことをしたら私は多分、人の顔色を窺うようになってしまう。 これでいいんだ。 もう、私美沙とは笑いあえないんだ。 大好きな人を一人、私は失った。 |