鈍い光が、目の奥に差し込んできた。
 うっすらと目を開ける。

「あ、気が付いた?」
「リ、ク……?」

 私、どうしたんだっけ。
 目の前に、リクがいる。
 そうだ、波音の家にいて、凛が好きだって告げられて。
 凛と波音がお似合いのことに悔しくて家を飛び出して来て。
 気付いたんだ。私も、凛のことが好きだって。
 それで、泣いていたところに、リクとぶつかって。

 えっと、それから――?

「よかった、薬強くしすぎたかと思ったけど、大丈夫みたいだったね」

 え……、薬……?

 ジャリ

「……っ!?」
「おっと、動くと危ないよ?」
「なに、これ……?」

 私の両腕に巻き付いた鎖。
 見えないけど、足も鎖のような物で固定されていて動けない。
 今、気付いた。
 ここは、リクの家じゃない。
 倉庫、のような。

「ああ、ここ紫蘭の倉庫」

 疑問に思った私に気づいたのか、リクがにっこりと答えた。
 その狂気じみた笑顔に震えながら、聞きなれない単語を反復する。

「し、らん……?」
「ああ、君みたいなお嬢様は知らないか。紫蘭っていうのは、この町の暴走族。俺はそれの元総長なの」
「ぼう、そうぞく……?」

 驚きで固まると、リクがははっと笑った。

「そう、驚いた?」
「……なんで、こんなこと……」
「なんで? そうだな……、お前があの泥棒と関わりを強くしていたからかな」

 リクは一枚の写真を見せた。
 そこには私と凛が映っていた。
 これ、修学旅行の時に美沙がふざけて撮った写真。

「この右の男、誰かわかって一緒にいた?」
「え……」
「俺らと敵対してる睡蓮って暴走族の総長だよ」

 頭の中が、真っ白になっていく気がした。

「知らなかったって感じだね。じゃあまず、こいつの名前教えてもらおうか」

 リクを見る。
 もし、リクの言っていることが本当ならリクの凛の敵だってことだ。

 言いたく、ない。

「大丈夫だよ。俺らの質問にちゃんと答えてくれれば、何もせずに帰してあげる」
「……ない」
「ん?」
「そんな男、知らないわよ!!」

 リクは目を見開いた。
 気にせず、私は叫ぶ。

「誰かーーっ!!! 誰かっ、助けっ、」

 外に聞これば、誰かが通報してくれるかもしれない。
 そう思って、全力叫んだ。

 でも、ぱんっと、頬に衝撃が走り、言葉を止めた。
 呆然としてリクを見ると、さっきの表情は消え去り、冷徹な瞳で私を見ていた。

「リ、ク、」
「どうやら、お前みたいなお転婆娘には言葉で言ってもわかんないようだな」

 リクが扉の方に声をかけると、ぞろぞろと数人の男が入って来た。
 背筋がぞっと、冷たくなる。

「リク、やめ……」

 悪魔のような表情をして口を吊り上げるようにして笑っているリクは、こてんと首を傾けた。


「どこまで耐えられる、かな?」





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