女の子より、
※♂♀の続き
ある日の午後、いつもの資料室のソファーで棗とゴロゴロしていた。
棗と授業をサボることは珍しいことではない、なぜなら棗は不良だからな。
いつも色々な話をしたり昼寝をしたりしながら一緒に過ごす、今日は棗にずっと疑問に思っていたことをぶつけてみようと思う。
「棗、棗はなんで女の子に冷たいんだ」
「なに、突然どうしたの真ちゃん。俺そんな女の子に冷たいかな?」
「すごく」
棗は言い寄ってきた女の子にものすごく冷たい視線を向ける。
俺には向けたことのないような、冷たい冷たい視線だ。
そういう瞬間に俺は棗に愛されてるんだなって認識して、安心する。俺はずるい。
「んー、でもどうでもいいと思ってる人間に優しくする必要ないでしょ?そういうことだよ」
「でもみんな棗が好きだって」
「俺の顔が、でしょ。みんな俺の本質を知ったら離れていくよ」
そういう棗は少し寂しそうに見えた。
俺はどんな棗を知っても好きになるけど、みんなは違うのかな。
色んな棗を知って、色んな棗を好きになる。
「ていうか、真ちゃんはいいの?」
「なにが?」
「俺が真ちゃん以外に優しくして、好きになられたりとかしても。俺結構モテるし」
「それはだめだ」
ものすごくだめだ、棗が好きになられるのは別にいいとして。
もしも、もしも棗がその子を好きになってしまったら困る。
「でしょ、だからこれでいいの。わかった?」
「わかった」
棗には俺だけでいいと言われてるみたいでホッとした。
俺はまだ棗の側にいて良いのだ。
「それに、俺にはもう女いるし」
「だ、誰だ?」
し、知らなかった。まさか棗に女がいるだなんて。
そう言いながら棗は俺のケツを揉んでくる。
なんでだ棗、どうしてそういう流れになるんだ。
「誰って真ちゃんに決まってんでしょ」
「お、俺は、男だ、あっ!」
「真ちゃんかわいい」
素早い動きでベルトが外され棗の手が下着の中へと入り込んでくる。
いつもだったらこのまま流されてされるがままだけど、今日はだめだ。
「な、棗!今日は、今日はだめだ!」
「なんで、別に今日生理中じゃないでしょ?」
そういうとケツを揉みながらあからさまに不機嫌そうな顔をする。
そんな顔もイケメンだからかっこいい、ずるいぞ棗。
「今日は、ハチと約束が、ある」
「……」
「なつめ?」
そう言うとそれまで動いていた手が止まり、俯き無言になる。
「なつめ、どうかしたのか?」
「ハチハチハチハチってさぁ、いつもハチ公ばっかりだよね真ちゃんは。俺とハチ公どっちが大事なわけ」
「え、」
怒らせた、棗を怒らせてしまった。普段甘やかされてばかりだから、棗に少しでも冷たくされると俺はもう頭が真っ白になってしまう。
俺は棗に嫌われたら生きていけないのだから。
「もういい、行きなよ。ハチ公との約束があるんでしょ」
「な、なつめ、」
「なに」
いつもより低い声。不機嫌そうな顔。怒っているときの棗だ。
棗はこちらを見ない、怒っているから俺と視線を合わせてくれないのだ。
説明しなきゃ、ハチより棗が好きだって。ハチと棗は違うんだって、言わなきゃ。
「なつめ、確かにハチは大事だけど、違うよ」
「なにが違うのさ」
「好きが、好きが違うの。ハチは家族みたいな好きだけど、なつめは違うの。だって、なつめは俺の恋人でしょう?」
「…………はぁ、」
少し間をあけて棗は大きなため息をついた。
俺は思わずビクリと肩を揺らした。
もしかして嫌われてしまったのだろうか。
「な、なつめ、俺変なこと言ったか?」
オロオロとしているとぎゅうと抱きしめられる。
少し泣きそうだったが棗の匂いを近くで感じて一気に安心する。
棗の匂いは安心するのだ。
「真ちゃんには敵わないなぁって思っただけだよ」
「そ、そうなのか?棗の方が強いぞ?」
「そういうことじゃないんだけどね」
どうやらもう怒っていないみたいだ、安心して棗の背中に手を回し胸いっぱいに棗の匂いを吸い込む。
「はぁ、抱きつぶしてぇ」
「だ、抱きつぶされるのは困るけど……ちょっとだけなら」
「んふ、任せて、すーぐきもちくさせたげるから」
他の子には悪いけど、棗には俺だけのものでいてもらわないとな。
棗は俺だけのものだ。
(今日ハチと約束あるって言った!)
(もっとって言ったのは真ちゃんだろーが)
(い、言ってないそんなこと!)
(いやぁ、可愛かった)
END
相田真(16)
最近棗への依存度が上がっている。棗が卒業したらどうしようかと思ってる。
野々宮棗(18)
将来真を連れて海外へ行こうと思っている。海外で結婚するつもり。
蜂谷良(16)
ハチ。棗と出会う前真を世話していた。ずっと真に依存されていた。
なつまこは可愛いんですよ。
これ書く前に書いてたやつがあったんですけど、うっかりミスで消えてしまって悲しみです。
ちゃんと保存しないとね。
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