あなたが食べたい1






「なんでお前いんだよ。」



俺がメイクを終えてスタジオに入ると赤尾さんがとても嫌そうな顔をしていた。


「だって!会えないから淋しかったんですもん!!」




抱きつこうとすれば、近くのカバンを投げつけられる。それを器用に受け流して俺は赤尾さんに近づいた。




そもそも何故俺が赤尾さんの代表作である、渡る世間は嫁ばかりに出演することになったのかと言うと、マネージャーさんのおかげだった。赤尾さんのマネージャーさんは妙齢のメガネの女性である。俺の赤尾さんに手を出さないかヒヤヒヤしていたが、そんなことはなくいたって普通のマネージャーさん。それはいい。俺と赤尾さんが出演している料理番組はそこそこと視聴率があり、ほそぼそ続いていてこのままご長寿番組になればと俺は満足だった。




そんな時に事件が起こった。


「俺、番組二、三ヶ月休むわ」


ある日のうららかな昼下がり。俺に背を向けて弁当を楽屋で食べていた赤尾さんが言いだした。お茶を入れていた俺は目が点になった。


ぁあ。口元にケチャップついててエロいけどあれベロベロしたいな。そのままキスしてチョメチョメ…なんて何時ものように現実逃避しようとするも失敗。

「え?!なんで?!なんでですか?!!!俺が嫌いになりましたか?赤尾さんが使った箸を持ち帰ってオナったからですか?!それとも隠し撮り?!あ、あれですか?この前の赤尾さんをいじってた芸人締めたのが?!それとも、私物の……「てめぇ、ぶっ殺すぞ?!」」



それとも、の後は顔面に飛んできた弁当のせいで言えなかった。




「渡嫁の特番がお正月にあるのよ。それで。撮影が押していて、他の俳優さん達の予定と合わせて。ほら、赤尾はほとんど出ずっぱりですから。」


キレて出て行ってしまった赤尾さんの代わりにマネージャーさんが説明をくれる。マネージャーさんは俺が赤尾さんを好きなのをわかっているのか色々手を焼いてくれる優しく方だ。


「赤尾の代わりは事務所から他の子出すから。それでしばらくは…」


「だ…「だ?」だめです!!!俺の助手は赤尾一人!赤尾以外に俺を助手出来る人間はいない!」


「そーくるわよねぇ…」



いかにもめんどくさそうに言われて少し悲しい気持ちになる。しかしへこたれている場合ではない。


「萱元さんは最近俳優さんもしてるんですよね?なら、渡嫁にゲストで出れるか聞いてみます」

俳優なんて立派なものではないが、この際赤尾さんといられるならなんでもいい。俺は笑顔で後日きたオファーを受けたのだった。








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