お気に召すまま1
「ご主人様、お腹すきましたー!」
長友に指導を始めてから三ヶ月。もう、手は出してます。もちろんだよね。指導としてだけど。
でも調子乗ってきちゃったんだよねー。そんなアホな長友が可愛いからさ。どんなに調子に乗られても気になんない。
「んー?長友は何が食べたい?」
「ケーキがいいです!ご主人様!」
長友はソファーで横になる俺の上にまたがりながらねだる。尻を撫でると軽く体重を掛けてきた。うーん。重くはないんだけどねー。一応成人男子だからそこそこ腰にくる。
「長友。じゃあ、ケーキ頼んでやるよ。」
「やったー!ご主人様大好き!」
長友は俺の口の端にキスをすると自分で電話をかけに行った。ケーキを注文して戻ってくる。俺はその間にコーヒーを入れ始めた。
「ご主人様、俺がいれますが。」
「いや、いいよ。コーヒーは入れ方が大事だからよく見てなさい」
サイフォンは扱いが難しい。長友が怪我でもしたら大変だ。あー、本当うちでこーゆーことしてくれないかな。バイトだから長友がしてくれているとは分かっていても、つい期待してしまう。コーヒーを机に置くタイミングでケーキが届いた。
「ご主人様、あーん!」
自分のショートケーキを少しすくうと、俺の口元に運ぶ。その姿は執事なれど、いつ見てもとても初々しくよだれがたれる。
「ん。美味い。ほら、俺もしてやる。あーん」
ケーキを口に近づければ顔を寄せて食べる。雛の餌やりのようで微笑ましいく、愛しい。
「ほら、ついてる。」
口元のクリームを拭ってやり、またケーキを運ぶ。一人で食べ始めると、コーヒーにミルクだけいれて、少し冷ましておいてやる。長友はコーヒーは甘くなくても飲めるが、猫舌だ。加減してやらねば。
「あ、」
「あー、こぼして。ほら」
長友はよそ見したのか、シャツにクリームをつけてしまった。慌ててそれを拭いてやる。
「悪い子はお仕置きがいるな。」
「ご主人様…ダメな執事でごめんなさい」
長友は唇を舐めて、ソファーに倒れこんだ。
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