FREEDOM1
「サラン!サランは何が欲しいの?」
「自由。」
「それ以上!なんでもあげる。」
「じゃあなんもいらねー。」
サランをこの国に迎えてから、国は更に栄えた。サランはとても物知りで、賢くて、優しくて、本当に本当に僕の加護欲を誘った。真っ黒で吸い込まれそうなまっくろな瞳。そして美しく巻いた癖っ毛に、人ごみに紛れたらもうわからなくなりそうな凡庸な顔。堪らなく堪らなく僕好みだった。
ただここで一つ問題が起きてしまった。
サランが我が国にきて直ぐに、父が亡くなった。もちろん後釜は第一王子である僕。僕は本当に毎日毎日悩み暮らした。だって父は結構若くして死んだから。何も国について学んでいなかった僕は本当に辛い目にあった。でもサランが全て解決してくれた。
ある時、我が国が飢饉に見舞われた。サランは一匹のアリを使って魔法も使わずに、でも魔法のように解決してしまった。またある時は、隣国が攻めてきた。しかし、サランが出て行っただけで解決してしまった。隣国の王を王様にしたのはサランだったらしい。恩義を重んじた隣国の王は半永久的に同盟を組むことを約束してくれた。
国の女たちが、次々に盗賊に攫われた時も。
国中の井戸に毒を入れられた時も。
全てサランが解決してくれた。サランはそれでも何も欲しがらない。毎回解決した時に、何が欲しいか聞くと自由と答えた。でも僕にはそれは叶えてあげられない。
だってすっごくすっごく僕の中でサランは大きな存在で。
国にとってもサランは必要になっていたから。
さて。何が問題かというと。僕はそろそろ適齢期というものらしく。結婚を急かされていた。この歳になってまだ側室すらいないのはおかしいらしい。
でも正直サランしかいらない。サランは人間なので同じように年をとっている。むしろ少し年上かもしれない。と、いうかすごくすごく年上だと思う。聞いたらこの大陸ができる前から生きているのだと言っていた。そうならざっとうん千歳だ。
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