drug2





ジャックとやらの店は車でそこから移動して、俺らの店より離れた所にあった。それだけで安堵だ。


店に行く時も、学はジャックと英語で会話しどうしで、当たり前のように俺を後部座席に押し込めて自分は助手席に座った。たまにジャックからの質問を訳して俺にも尋ねてきてくれたが、それ以外は後ろを振り向きもしない。徐々に苛立ちながら俺は風景を眺めるしかなかった。


こんな事なら真面目に勉強しときゃよかった。









ついた店はオシャレで地中海をイメージし涼しげな外観だった。床には貝殻があしらわれ、わざと汚した感じもある。学は大袈裟なほどグレイト!や、ビューティフルを連発して店を褒める。ジャックはそれを聞くと、満足げにその出っ張った腹を揺らして愉快そうに笑った。すごいよね?!と俺にも話題をフルが、生返事しかできない。確かにうちのじぃさんの店はお世辞にも綺麗じゃないが、そこがイイって褒めてたじゃないか。普通他の店を褒めるか?!無神経だろ。



俺のイライラは更に学が美味そうにジャックの飯を食ったところで頂点に達した。は?美味い?俺の飯じゃない!唾液も、精液も、何にも入れてないのに。


確かにジャックの飯は美味かった。多分俺の小手先だけの料理よりは全然。本格的だった。何もかも、繊細かつ大胆な味付けでまた食べたいと思ってしまう。学もこの味この味!っと、口に目一杯頬張ってジャックに満面の笑みを見せる。そして。




「え?またこの店で?!無理だよー。俺の為とか、嘘じゃん!ね、オース…オース?「帰るぞ」えっ?!えっ?!」



俺はその一言で席を立ち、乱暴に机にナプキンを叩きつけると学の、腕を引いて無理矢理店から出た。学は少し抵抗を見せたが直ぐに諦めてついて歩く。



随分歩いたが徒歩で無言で帰宅する。店に戻った瞬間ゴングが鳴った。



「なんで、あんな態度とったんだよ!馬鹿!ジャックに失礼だろ?!」


「ジャックジャックって、あんな腹の出たヒゲのオッサンの、どこがいいんだよ!?飯も美味い美味いって!」


「だって本当だし!つか、めちゃくちゃジャックがオースに話しかけてたのに大半無視して!態度も悪いし。最低!」



「仕方ないだろ!俺は英語はわかんないんだよ!」


「え?」


「えっ、ってなんだよ。一言もわかんないよ。だからもし、ジャックとやらが話しかけててもわかんなかったっつーの!」


そう言うと、学は弱々しく笑いながら、かたんっと椅子に座る。



「そっか。オース英語…留学してたくせに、もー!ジャックさんはね、俺らのカップルを是非食事に招待したいって言ってくれたの!!」


「だから、飯食って…ん?カップルってなに?」


カップルつーのは恋人つー事であってるのだろうか。


「だから、ジャックは俺らがゲイカップルってしった上で招待して、祝福してくれてたの!!メチャクチャオースも褒めてたよ?いい男捕まえたなおめでとうって!ジャックはいい人だから偏見ないの!なのに、オースずっと仏頂面で。酷いよ!」


「つまり、学が俺らの事話したの?」



「ああ!だって、俺はもうオースから離れらんないから。それにジャックは俺の第二の父だから。なんでも話すよ?」



俺は顔が熱くなるのを感じた。学がそーゆー風に思ってくれていたなんて。しかも、ちゃんと俺らの関係も話していてくれたなんて。


「ねえ、飯本当に美味いと思った?」


「んー。あれ多分ジャックの作ったやつじゃないよ。息子のショーンのだと思う。それにひと味やっぱり俺には足りなかった。」



そう言う学に近寄ってチュッとキスをする。学はそれを受け入れて俺の頭をホールドするように抱きしめて、キスを深め唾液をすすった。


「この味、この味。」


学が笑うのにつられて俺も笑った。俺が不安になる事は無かったんだな。学はこんなにも俺に依存してくれてたのに。



「学。愛してる」


「俺も。オースの全部大好き。」












『父さん!学は?!』


先ほどの店の厨房から、ジャックのような赤毛に目鼻立ちのはっきりとした青年が現れた。長身に赤毛。目は空のように真っ青で鼻は高く、少し鷲鼻ながら形は良い。少しソバカスがあるが、それもチャームポイントになっている。身体は筋肉質ながら、細身だ。彼はコック服を捲りながらデザートを持って飛び出してきた。


「学は帰ったよ。また来ると行っていたが…「えーー?俺、学が好きだっていうイチゴムースメチャクチャ研究したのに!」」


shit!!と、毒づきながら彼はムースを机に乱暴に置いた。ムースはぷるりと美味そうに震える。ジャックがそのムースにスプーンを伸ばすも、素早くショーンはその手をはたいた。


「そうだ。確かこの街にはいるんだよね?!ならいつでも会えるじゃない!」


「しかし学は恋「あ、父さん!学にうちで働けって言った?いってねえの?!」いや、だから!」


「だからな、ショーン。学は恋…「あ、つか今から会いに行けば良くない?!俺頭いー!!」」



行ってきまーすと、ショーンはジャックの声を全て遮り素早くムースにラップをすると、コック服を脱ぎ捨てて出て行ってしまった。


「だから、学は恋人と…はぁ。本当に話を聞かんバカ息子だわ。学すまん……」



赤毛の腹の出た白人は空を仰ぎこれからの波乱にそっと学に詫びるのだった。






END









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