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奈々子が南次郎とその後ろに不貞腐れたリョーマを連れて部屋に戻ってきた。先程落とした洗濯物を端い寄せてから間宮も入れて円になるように座り、南次郎がリョーマと間宮を交互に見ながら言った。
「こんな可愛こちゃん泣かせてたのか、立派になったな」
「ば、違うって」
「あの、本当に違うんです」
間宮は自己紹介とここにいる経緯を、リョーマの時と同じように話した。もちろんリョーマのボールが当たり気を失った事も含めたので、南次郎がさらにリョーマを責めた。
「リョーマよ、もっと上手くならなきゃだめだな」
「ちぇっ」
「頭のほうは、もう痛くないので本当に大丈夫です」
「そしたらお風呂とか入れてないわよね、準備してくるわ!」
奈々子が腰を上げながら間宮に言い、お風呂場へと部屋を飛び出して行く。南次郎はそうじゃねーだろとツッコミを入れてから改めて間宮に向き直り、顔を覗き込んだ。
「嘘ついてたら目を見りゃ分かるが…こりゃ本当みたいだな」
「自分でもまだ状況を理解しきれてないんですけどね」
遠くで風呂を沸かす際流れるメロディーが流れているのが聞こえ、間宮は自分の家もこの音楽だったなと思い出す。そっぽを向いていたリョーマが口を開いた。
「で、アンタこれからどーするの。行くところあるの?」
「うーんお金尽きるまではネットカフェかなと思ってたけれど…」
南次郎がそれはダメだと首を振る。
「年頃の女の子がひとりでそんな所行っちゃぁ誰かに襲われるぞ」
「あ、はい…」
奈々子がバスタオルを手に戻ってきて、扉から顔を覗かせて言った。
「じゃあ身寄りできるまでこの家貸しちゃえばいいじゃない!」
リョーマと間宮は驚き声を上げ、南次郎は口元に手を添え考えるような素振りを見せる。
「まぁいいが、タダでってほど甘くはねーな」
「最近私も忙しいから、家事の手伝いとお庭の掃除でどうかしら?」
「よし、料理も上手そうだし部屋も余ってるし、それで良いんじゃねーか!」
間宮が口を挟む間もなく居候する事が決まっていき、発言できたのは最後に感謝の意を述べる時だった。
「あ、なんかすみません、ありがとうございます」
「皆、まだまだだね」
リョーマはそう言うと部屋を出て行った。続いて南次郎も飯だと叫びながら部屋を出ていき、奈々子がそれに続いて部屋を出る前に間宮に言った。
「お風呂もうすぐ沸くはずだから、先に入っちゃってね。着替えは私のパジャマだけど許して!」
その間に晩御飯準備しておくから、と小走りで出て行った。あまりの展開の速さに、間宮はお風呂が沸きましたのメロディーが聞こえてくるまでその場から動けなかった。
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