7.寝ぼけ眼の君

丸井は眠い眼をこすりながらぼやけた頭をだんだん醒ましていく。5時間目の古典からぶっ続けで寝てしまい、時計を見るともう部活が始まる10分前だった。終わっても起こしてくれなかったクラスメイト、特に面白がって自分だけ部活に行った仁王を恨みながら飛び起きる。

「ホームルーム無かったとか知らねぇよ起こせよ!」

真田の鉄拳制裁を食らうまいと急いで準備をしていると、ふと誰かの机の上にスマホが忘れられているのに気づく。しかし、今は自分の身を護る事が最優先、スマホはそのままにテニスコートを目指した。

ウェアに着替えてコートに出たのが集合時間ちょうど。肩で息をしている丸井に柳生がやれやれと声を掛けた。

「丸井君、顔にノートの跡がついていますよ」
「うっせ、仁王が起こしてくれなかったのが悪ぃだろ」
「プリッ」

飄々としている仁王を睨んでからアップに向かう。練習メニューは特にきついもので、真田と幸村を除いてほとんどの部員が終わった後にまともに立っていられなかった。

「今日やけにメニューきつくなかったッスかぁ」
「もーむり、むりむり」

自分が飲んだ後のスポーツドリンクのボトルをを手渡してくる切原からそれをうけとり、できる後輩を持ったと思いながら全部飲み干した。

「精市くんのご機嫌がななめだったんだろぃ、どーせ」
「ちょ、先輩飲み過ぎ!」

負荷が高い分練習時間は短かったので、しっかりクールダウンを行ってからアフターとして壁当てへ向かった。他の部活のボールの音や掛け声が聞こえてくる中で壁打ちをしていると、ふと教室にあったスマホのことを思い出す。

一緒に来ていた準レギュラーの友達に一言掛けてから教室へ向かう。ガラリと戸を開け見渡すと、案の定放置されっぱなし。ケースについたストラップにはイニシャルが刺繍されており、間宮の持ち物だと分かった。

「しゃーねーな、届けてやるか」

俺ってやっぱ良い奴だよな、と誰に言うでもなく教室を出た。間宮は女子ラクロス部であり、第三グラウンドで活動している。テニスコートとは反対側にあるので、丸井は間宮が部活をしている姿を見たことがほとんど無かった。

グラウンドに着くとミニゲームをしている最中で、ちょうど間宮が得点したらしく笛が鳴大きく鳴った。暫く眺めて、ルールが少し理解でき始めた所でゲームが終わった。部員たちは各々ボールアップやコート整備に取り掛かっていく。

丸井はタイミングを見計らい間宮の名前を呼ぶと、笑顔で近づいて来る。

「スマホ忘れてたぜぃ」
「え、本当に?ありがとう!」
「天才的ぃ?」

よく私のだって分かったね、と首をかしげてから手を振りながらグラウンドに戻って行く。丸井も手を振り返て、シャワーを浴びにクラブハウスに戻った。


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