4.始業式と君
「これで始業式を終わります」
という教頭の声が聞こえると、睡魔がその手を緩めてくれるのを感じた。大きく欠伸をする。
式はとても退屈で、校長は毎年同じようなことを話していた。あとは春休み中にあった大会などの表彰、そして風紀委員からの諸注意。さっき喋っていた怖い人も確かテニス部だった気がする。
伸びをしてから見渡すと、今年も一緒に過ごすことになったブン太と仁王も大きな欠伸をしている。朝、仁王が私の荷物を持ったまま教室に上がったのは既に同じクラスだと知っていたからだった。
体育館から戻るときも結局ふたりと一緒だった。
「どんな1年になるだろね」
「波乱がおきる」
「プリッ」
「不穏なこと言わないで?」
そのほうが面白い、と仁王。
まぁたしかにと思ってしまうのはただ退屈だからか、またふたりと過ごせる事が嬉しいからなのか。
長いホームルームを終えて、お腹が鳴り始める頃。ブン太の提案で駅前に新しくできたファミレスで一緒にお昼を食べることになった。始業式の日は午後委員会やら職員やらの会議があるらしく部活動は原則無し。
担任との帰りの挨拶を終え、3人は駅の方面へ向かう。テニスバッグではなく指定のスクールバッグを背負うふたりがとても新鮮に映った。
混み合う店内はさすが開店したてといった様子である。大盛りのナポリタンと季節のパフェを頼む丸井の向かいで、ひかりはマルゲリータピザ、仁王は生姜焼き定食ライス少なめをオーダーした。
ドリンクバーのオレンジジュースを音を立てて吸いながら丸井はひかりに尋ねる。
「そーいえば昨日何で俺に宍戸の事聞いたんだ?なんかあったか?」
「重たいもの運んでたら手伝ってくれた」
「知り合いなんか?」
「いや昨日初めましてだった」
丸井がふーんと運ばれてきたナポリタンに集中し始め、話題はここで途切れた。ほぼ無言で食事を終え、ドリンクバーのジュースでだらだら近況報告をしながら過ごすともうおやつの時間を過ぎていた。
「今日お店手伝わなきゃいけないからそろそろ」
「相変わらずこき使われてるなお前」
「社畜じゃ」
ブン太に軽く引き留められたが親との約束を破ると何をされるか分からない。ふたりはもう少し残るとの事で、ピザ分のお代をテーブルに置いてから店を出た。
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