校内でセシル・クルタロスの存在を知る人は少ない。生徒ではない。しかし教師でもない。
「ただの引きこもりでーす。なんちて」
教室からも寮からも離れた一室。荒々しい足音が近づいてくる。ここに来る人はだいたい決まっている。扉が乱暴に開かれるまで秒読み…
「クルタロス!!」
する暇もなかった。残念。現れたのはこの部屋の主。生徒からは切ないほどに嫌われている用務員。
「どこにいるクルタロス!返事しろ!」
どこって目の前にいるんだけどなあ。至近距離で怒鳴られれば耳が疲れる。
「ここにいますよう、Mr,フィルチ。ついでに言えば私の部屋でもあるんですが」
発言すればぎろりと飛び出た両眼と視線が合う。
「ふん。居候の分際で偉そうに」
「だからー、掃除に洗濯等させてもらってるじゃありませんかー」
愛想よく笑顔で言えば全力で殺気が返された。落ち込むわー。
「ところで何か御用ですか?
「…教授がお呼びだ。女子生徒が見つかったと」
「?何の話っすか先輩」
「は?」
「へ?」