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世間では『名前を言ってはいけないあの人』が復活したことはデマと思われているみたいっすねぇ。特に魔法省が躍起になってデマと思わせようとしているとか。新聞に載っていないですが、世間で何が起こっているのやら。それくらいなら私だって知っていますよ。何せあのホグワーツ城にいましたからね。ちゃんと終業式にも出席して校長のあの演説も聞いていましたとも。え?知らなかった?それはあなた方が私に気付いていないだけですよ。んん?スネイプ教授?教授がどうかしました?彼が何をしているかなんて私は知りませんよ。えーえー、まーったく欠片も知りませんとも。仲がいい?あらー、嬉しいこと言ってくれますね〜。同じこと教授に言ったらおそらく磔の呪いが無言で返ってきますケドー。

「だーかーらー、私を締め上げるのは無駄と言うかー」
「別に締め上げているつもりはないよ。確認しているだけで」

あやや、困らせてしまいましたねぇ。だって、本当に何も知りませんからー。あなたは教授を疑っているのでしょうけど。

「てゆーかー、あの教授が私なんかにばれるようなことしますー?」
「それとこれとは別だよ」
「わー、話題を変えられました〜。聞いたのはMr,ルーピンなのにー」

ひーどーいー、なんて捨て台詞を残して何故か私も参加させられていた会議から脱出。やですねぇ、リーマス・ルーピン。鼻が利くのは考え物。私に気付いてしまうから、隠れてても見つかってしまう。

部屋の扉を閉めて深呼吸。何でこんなことになったのやら。まぁ、結局は校長のご命令故、なんだけど。

現在、私がいるのはシリウス・ブラック所有する愉快なお屋敷兼不死鳥の騎士団とやらの本部。所属していない私がいるってどうなの、と思いながら。時々教授も来るから何とも…あぁ、嬉しいですとも。すでにホグワーツ城では夏休みが終わり授業が始まっている。なのに何故私がここに、といえば、端的に校内が安全じゃないからです。何やら新任教師が魔法省側の人間らしい。いくら影薄い私でも、呼び出されれば行かなくてはならないし、クルタロス家のことを知られていればさらに厄介。今まで逃げまくってたのに。魔法省からすると、私の実家って予言とは別に予知、と言うくくりにあるらしい。
何でもかんでも分かるわけじゃないんですけどー、と言ってみても信じてくれなさそう。そうこうしているうちに闇側陣営にも目をつけられれば、とっても面倒くさいことになりそうだ、という校長の判断(多分に私の解釈含む)です。まぁ、そんなこんなでこの屋敷にお邪魔しているわけです。ちなみにヴァルヴェルデは今頃ホグワーツ城内でのびのびと、本当にのびのーびと暮らしていることでしょう。寂しく何てないよ、えぇ全く。
用務員の仕事は何故かMr,フィルチがやる気満々でこなしているらしい。ぎっくり腰になってないといいけど。

さて、自室に籠ろうかと足を動かしたら、進めない。というか、捕まれていた。

「待ってくれ、セシル」

さっき会話していた相手に。

「驚きですねー、いつからファーストネームを呼ぶ仲になったんですかー」
「・・・すまない」

どうして、そんな申し訳なさそうな顔をするんで。無言でいたら、Mr,ルーピンは言葉を探すため迷っていた視線をまっすぐ向けてきた。鳶色の目とあっていまった。

「僕は、気付いていたのにシリウスやジェームズに何も言わなかった」

学生のころ、と付け加えられて、何の話か分かってしまった。すぅ、と自分の中に冷たいものが混じる。

「ずっと、あやまりたかった。許してくれとは言わない。ただ、言いたかったんだ」
「そーですか。なら、もういいですねー?夜も遅いのでおやすみなさい〜」

廊下を突っ切って階段を上ろうとしたら、目を丸くしてそこに立っていたのは、この屋敷の主シリウス・ブラック。ヤなタイミングで会っちゃいましたねぇ。

「何の、話だ。俺たちが、あんたに何かしたのか?」
「シリウス!」

Mr,ルーピンが悲鳴のように名を読んだけど、呼ばれた当人はさっぱり、て顔つき。

「今更掘り返す話でもありませんよー」

横を通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。今日はよくよく捕まえられる日ですね。

「俺は2年前あんたに救われた。あんたが森に置いてってくれた食べ物で生きられた。俺があんたに何かしてしまったのなら教えてくれ」
「たまたま気まぐれで外出して何故かランチボックスを忘れていっただけですー。何回も言わせないでくださいよぅ」

会うたびに感謝されるわけだが、礼を言われるためにしたわけじゃない。彼が飢え死にすれば流れが変わってしまうことを恐れてのことだ。打算にまみれてしたことに礼を言われても、気まずいでしかない。

「それでも俺はあんたに感謝している。だからこそ、教えてくれ。俺はあんたに、何をしたんだ?」

今更ですけど私、耐え性がないんですよう。短気なんです、実は。なのでぷっつんしちゃうこともあったりして。

「そう言った時点で、もういいや、ってなっちゃうんですよぅ」



そうして、後で悔いちゃうのです。


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