「あ!志波くん!」
「ワンワンッ!」
「ニャーニャー!」
「………何してるんだ、おまえ?」
「ほら!あっちが本物の志波くんだよ!」
「ニャ〜♪」
「キャンキャンッ♪」
「おわ!」
「助かった〜…」
「…どうしたんだこの犬猫たち……ってそれよりおまえずぶ濡れじゃないか!」
「ちょっといろいろあって…くしゅん!」
「早くおまえの家帰って着替え…いや、オレの家の方が近いな…ほら、取り敢えず上着羽織っとけ」
「え、でも濡れちゃうよ」
「そんな事よりおまえが風邪引く方が問題だろ、行くぞ」
「ニャ〜」
「キャンッ」
「…今は付いてくるな」
「クゥ〜ン…」
「ごめんね、今度志波くんと一緒に来た時遊ぼうね」
「ニャー♪」
「ふは〜さっぱり!着て早々お風呂借りてごめんなさい…」
「謝らなくていいから髪きちんと乾かせ……あと…服をしっかり着ろ…」
「ちゃんと着てるよ、志波くんの服大きいからこうなっちゃうの。あ、服まで借りちゃって本当にごめんね…」
「……それは謝る必要はない、むしろ…」
「ん?」
「あ、いや…こういう時は違う言葉があるだろ」
「…ありがとう」
「ああ。……で、一体何があったんだ?」
「……実は…今日丁度日付が変わった時電話したでしょ?」
「そんな前から始まるのか…」
「その後…え、っと…乙女ハッスルとでもいいますか…」
「……は?」
「テンション上がって携帯が窓から落ちちゃったの」
「どうやって…」
「と、とにかくブンブン振ってるうちに飛んでっちゃったの!で、丁度偶然窓の下を通り掛かった黒い柴犬がくわえて持ってっちゃったの」
「黒い柴犬…」
「一瞬『わぁ志波くんだぁ…』って呆けてたんだけど、慌てて追い掛けて…」
「ちょっと待て。その時間に外出歩いたのか?」
「う…うん…」
「危ないから夜外出るなってあれ程言ってただろ」
「ごめんなさい…慌ててたからつい…でもその後冷静になってすぐ家に帰ったから大丈夫だったよ」
「心配させるような事あんまりするなよ…」
「で、諦めて帰って寝ようとしたんだけど気になってなかなか寝れず寝坊しまして…」
「寝坊は予想してた」
「急いでケーキ作って支度したんだけど、家を出る頃には10時回ってたの…」
「それだったら余裕で昼前には着いてただろ?」
「そのはずだったんだけど……向かってる途中で見つけちゃったのよ、あの柴犬を」
「…まさか追いかけたのか?」
「そりゃ勿論!取り返して早く連絡も取りたかったし」
「…家電で連絡すればよかっただろ」
「…はっ!そっか!」
「……はぁ」
「あ、頭が回らなかったの!」
「…で、犬を追い掛けて何で水浸しだったんだ」
「それが…初めは逃げだしたんだけど、急に止まって逆にこっちに向かってきて…」
「襲ってきたのか!?」
「違う違う、どうやら狙いはこのケーキと…これ…」
「…それは…」
「うん、志波くんにもらったリストバンド。多分これから志波くんの気配を感じ取ったんだと思うの」
「いや、それはないだろ…」
「だって!初めはその柴犬一匹だったのにいつの間にか他の犬とか猫まで追いかけてきたんだよ!」
「…さっきのやつらか」
「で、後ろ確認しながら逃げてたら目の前が噴水広場で…」
「…落ちたのか」
「でも安心して、ケーキは無事死守したよ!」
「馬鹿、おまえが無事じゃなきゃ意味ないだろ」
「…うん、ありがとう」
「はぁ…とにかく、その後公衆電話ボックスに逃げ込んだって訳か」
「そう…で、急いで志波くんに連絡して今に至る…」