「……」
「……あの、本当にごめんね。せっかくの誕生日台無しにしちゃって…」
「…そんな事はいいから、危ない事はするな」
「うん…でもね…」
「携帯が大事なのは分かるが、その犬がもし凶暴だったら怪我してたかもしれないんだぞ?」
「だけど…」
「ケーキもありがたいが、そのせいでおまえが危険な目にあうなら自分を優先してくれ」
「…けど……」
「……オレの誕生日なんかどうでもいい、それよりももっと自分を大事にしろ!」
「………どうでもいい事なんかじゃ、ないもん…」
「え?」
「…大好きな人の…誕生日だもん…」
「……おまえ…」
「ケーキ…志波くんが喜んでくれるように好きだって言ってたもの参考にしたり、飾り付け考えたり…」
「………」
「それに携帯には…志波くんからもらったストラップ付けてて、それだけはどうしても返して欲しかったの…」
「高校の修学旅行の時の…」
「加えてリストバンドまで持ってかれたらどうしよう、って思って…必死に逃げて…」
「……分かった…」
「せっかく志波くんにもらった大切なものなくして…嫌われちゃったら、どうしよう…って……」
「分かったから……泣くな」
「ふ……うぅ…」
「…悪かったな…怒鳴ったりして」
「ううん…誕生日なのにこっちがこんな迷惑掛けて…」
「迷惑だなんて思ってない。…ただ、怒鳴ったことは謝るが、言いたいことは変わらないからな」
「…?」
「オレの知らないところでおまえが危険な目にあうのだけはやめてくれ…ましてやオレのせいで何かあったら自分が許せない」
「…ごめんなさい…」
「これからはまずはオレの所に来い。…守ってやるから」
「…うん…ありがとう」
「よし、泣き止んだな…オレがおまえを嫌いになるかよ」
「だって、プレゼントを…」
「ああ、これだけ大事にされて嬉しくないわけないだろ。サンキュ」
「志波くん…」
……ヮンッ
「…ん?」
「ワンワンッ!」
「なんだ、結局一匹付いて……あれは…」
「あ、わたしの携帯!」
「よかった〜ストラップ無事で…」
「こいつか、持ってった柴犬って」
「ワンッ!」
「…もしかして、拾って持って行こうとしたんじゃなくて、持ち主探してたのか?」
「ワン♪」
「だから途中で気付いてこっちに向かってきたんだね…ごめんね、ありがとう」
「クゥ〜ン」
「よかったな、携帯戻ってきて。…そして、ストラップも」
「うん!」
「……さて、一段落したところで、おまえが死守してくれたケーキもらってもいいか?」
「あ、忘れてた!」
「今日何も食ってないからもう腹減って死にそうだ…」
「ご、ごめんね!今用意するから!……はい、どうぞ!」
「…あー」
「…?」
「…食べさせたかったんだろ?」
「あ、あれは弾みというか意地というか…それに志波くん嫌がってたじゃない!」
「人前ではな。…今はオレ達しかいないだろ?」
「で、でも…ほら、『ちっちゃな志波くん』がいるし!」
「ワン?……クゥ…」
プイッ
「…見てないとさ、さすが『オレ』だな。ほら、あー…」
「うぅ……改めて志波くんから言われると逆にこっちが恥ずかしい…」
「…嫌か?」
「まさか!……じゃあ…はい、あーん」
「……ん、うまい」
「よかった…はい、もう一口」
「ん……本当にうまい。オレの為に作ってくれて…ありがとな。ほら、おまえも」
「い、いいよ!」
「なんだ?ここまできて恥ずかしいとかいうのか?」
「違うよ!志波くんお腹空いてるでしょ、一杯食べて。…それに…やっぱり昨日までに結構食べたし…」
「……なぁ、前から思ってたんだが最近食い物とか気にしすぎじゃないか?高校の時はもっと気にせず食ってただろ?」
「それは……だって…お腹見られちゃう時が…できたし…」
「ん…?」
「お、女の子にはいろいろあるの!」
「……それは…オレが今しようとしてる事に関係あるか?」
「…え?」
「…なぁ、誕生日プレゼント、去年と同じものもらっていいか?ケーキと、もうひとつ…」
「もうひとつって……あ!え、えっと…」
「くく…こんな反応してくれるようになるなんてな、去年のオレに教えてやりたい」
「だ、だってあの時はそんな意味があるなんて思いもしてなかったし!」
「……駄目か?」
「あの……ほら!ちっちゃな志波くんが…」
「さっき出ていった。気が利くな、小さなオレ」
「いつの間に…」
「なぁ…その格好もプレゼントに見えて仕方ない……我慢できそうにない」
「………うん」
「言ってみるもんだな…本当にいいのか?」
「……元から今日…泊まっていく予定だったし…きゃ!」
ドサッ
「前に忠告はしたからな、そういう事言うと我慢できなくなるって…」
「……うん…」
「……覚悟しろよ…」
「志波くん…」
「…ん?」
「お誕生日、おめでとう…大好き」
「ああ……オレもだ」
- END -<09/11/21>
大変長らくお付き合いありがとうございました。
志波くん19歳おめでとう!