志波誕祭'09

あと1日


「…あのね、志波くん」

「なんだ?」

「昨日のシュークリーム、本来は家族に食べてもらおうとしてたんだけど、志波くんが食べに来たからついつい一緒に自分も食べちゃったのね?」

「家族にやるつもりだったのか…悪かったな」

「ううん、元は志波くんの為に作った物だからそこはむしろよかったんだけど…問題は一緒に食べたでしょ?」

「そうだな、うまかった。サンキュ」

「でね、明日の誕生日当日にもケーキ作ってあげようと思ってるんだけど…」

「本当か?楽しみにしてる…」

「うん、心を込めて作るね。…で、志波くんにあげるはずだけど多分一緒に食べる事になるじゃない?」

「去年も一緒に食ったしな。……今年はなんなら口移しで…」

「い、いいです!遠慮します!」

「くく、冗談だ……半分」

「〜っ!と、とにかく!甘いもの昨日も食べちゃって、明日も食べる予定なの!」

「あぁ、そうだな」

「だからね…その……」

「…食わないのか?」

「…………食べる」



「う〜…アナスタシアに来るなら朝ごはん抜いてくればよかったかも…」

「そういう事言いそうだったから場所言わなかったんだ。飯はちゃんと食えよ?」

「うん、分かってます…はぁ、いっぱい運動しなきゃ」

「オレのトレーニングに付き合ってるんだから十分動いてるだろ」

「そのはずなんだけど、最近は志波くんを終始見つめて終わってる気がする…」

「見つめて……」

「あ、ち、違うよ!見つめてじゃなくて、見ているっていうか!」

「何が違うんだ?」

「あの、ほら…体調管理をね!そう、体調を見てるの!」

「……まぁ、そういう事にしとくか。どっちにしろ嬉しいしな」

「う……その……見とれてました」

「素直になったな…ほら、褒美だ」

「え…!あの、でも…!」

「…オレの祝いなんだろ?」

「…あ、あ〜ん…」

パクッ

「うまいか?」

「うん…けど…恥ずかしい……」

「おまえでも恥ずかしがるのか」

「当たり前だよ!…もう、志波くんが何か食べたかったんじゃないの?」

「ああ、限定新作ケーキ。…食いたかったんだろ?」

「え?…じゃあわたしの為?志波くんのお祝いなのに…」

「おまえが行きたい所に連れてってやる事がオレのしたい事。つまりはオレがしたい事を叶えてくれてるわけだ」

「でも結局わたしだけいい思いしてるし…」

「そうでもない。いいことも聞けたしな…そうか、見とれてるのか…」

「もう……まぁ、志波くんがいいならそれでいいや」

「ああ…かなり満足だ」

「もっともっと喜んでもらわないとね。てことで、はい、今度は志波くんがあーん」

「……無理だ」

「え…嫌…?」

「違う。…こんな人前でそんな恥ずかしい事できるか…」

「あ、ヒドイ!わたしも恥ずかしかったのに自分だけ!はい、あーん!」

「おい…や、やめろ…!ほら、おまえが食え、食わせてやる」

「ダメ、わたしが食べさせてあげるの!」



「落ち着け、そして口を開けろ」

「ううん、志波くんが…」

「あの、お客様……」

「「!」」

「仲がよろしいのは結構なのですが、申し訳ありませんが店内ではもう少しだけお静かにお願いします…」


「「………すみません」」



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